JA専門の監査法人発足

全国の農協(JA)の会計監査を担う「みのり監査法人」(東京・千代田)が発足した。JAはグループに所属する農協監査士による監査を受けているが、農協改革を進める政府は2019年までに一定量の貯金を持つJAは公認会計士による監査に移行するよう求めている。新たな法人はこれに対応し、JA専門の組織として出発する。

このJA監査については個人的に興味があるところなのですが、以下が気になるところです。

MEMOとして残させてください。

1.農協監査士による監査では目標を達成できないことから監査法人監査へ移行した経緯を踏まえると、JA内部はこの監査法人から徹底的に指導を受けることが必要でそれが想定されている。

JAが監査に耐えられるように自ら・事前に内部統制を整えることはほぼ不可能と推測されるので、外部監査法人としても徹底的に改善・指摘事項を挙げて指導的機能を発揮する覚悟が必要。

2.内部統制監査とあるが、財務報告目的のために形式的にキーコントロール(KC)を特定して評価する、という一般的なJSOXの評価云々以前に、「そもそも管理体制がなっていない」点を如何に改善するか。

財務報告の正確性も重要であるが、それ以前としての業務の非効率性、組織の論理による非合理性、数字を含めた脆弱な管理体制とこれを生じさせている組織および社員の管理意識の低さがあればこれをまず改善する必要がある。民間上場企業であれば当然に遂行するはずの管理体制を如何に構築していけるようにアドバイスしていくかが重要なミッションであると推測します。

3.厳しい指摘内容については、JA内部の組織的反抗(「マンパワー的に無理です」などの拒絶反応も含む)も推測されるので、これを説得するに足る「ゴールの共有」と、そのヒントとなる「民間事例」の情報提供も必要ではないでしょうか。ハードルの高い課題については、上層部レベルでの相談・検討が必須でしょう。これまでの農協監査士による監査結果は完全に棚にあげてしまう覚悟も必要です。

何を言いたいかというと、財務報告目的の内部統制の整備・運用状況構築は正直後回しでよくて(いわゆるJSOX監査導入2年目以降のように、「作業的」「統制の内容もよくわからぬままなんとなくテストすること」「押印が無いことにいちいち時間を費やすなどの形式的な議論・検討」を目指してはいけない!)、まずは「正しい管理体制」に向けての組織的な意識改革とそれを喚起する仕組みの構築が優先されるのでは、ということです。これらは実際は同時並行で進めていくのでしょうが、農協改革の期待水準を超える実のある監査を実行する必要があるのだと思います。

個人的には上記の達成がゴールだとすると、極めて難易度の高い業務であると推測します。新監査法人およびJAの方々には、あきらめずチャレンジ継続していただければと思います。