東芝、メモリ事業売却で不可解な点(クロス取引)

  • 2017年10月5日
  • 2017年10月5日
  • 会計

9月20日、東芝は半導体メモリ子会社である東芝メモリについて、米投資会社のベインキャピタルを中心とする日米韓連合との間で株式譲渡契約を締結することを取締役会で決議した。これを受けて同28日、日米韓連合と売却契約を結んだ。あとは10月24日に予定されいている東芝の臨時株主総会で承認されれば、正式に東芝メモリ株の売却が決定する。これで、最大の懸案だった債務超過が解消される――。と、多くのメディアは報道しているが、果たして本当だろうか。債務超過が解消できたとしても、ギリギリの解消になるか、場合によってはできないかもしれない。

話は重厚ですが・・、この顔写真・・・・

 

さて、本件、「クロス取引」が取りざたされていますので、この機会にご紹介or復習しておきたいと思います。

金融商品会計に関する実務指針 クロス取引

42. 金融資産を売却した直後に同一の金融資産を購入した場合又は金融資産を購入した直後に同一の金融資産を売却した場合で、譲渡人が譲受人から譲渡した金融資産を再購入又は回収する同時の契約があるときは、金融商品会計基準第9項(3)の金融資産の消滅の認識要件を満たさないので、売買として処理しない。したがって、購入の直後に売却された場合、当該購入金融資産と保有する同一銘柄との簿価通算はできない。譲渡価格と購入価格が同一の場合、又は譲渡の決済日と購入の決済日とに期間があり当該期間に係る金利調整が行われた価格である場合、譲渡人が譲受人から再購入又は回収する同時の契約があると推定する。ただし、売買目的有価証券については、同一銘柄のものも頻繁に売買取引を繰り返すので、結果として同一価格になることもあるが、これはクロス取引に当たらない。

 

金融商品会計に関するQ&A

Q12:いわゆるクロス取引が認められないのはなぜですか。

A: 譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買い戻す権利及び義務を実質的に有している場合には、金融資産の消滅の認識要件(金融商品会計基準第9項(3))を満たさないので、たとえ時価で取引されたとしても売却処理は認められません。したがって、金融資産を売却した後に同一の金融資産を購入した場合又は金融資産を購入した後に同一の金融資産を売却した場合で、譲渡人が譲受人から譲渡した金融資産を再購入又は回収する同時の契約があるときも、金融資産の消滅の認識要件を満たさないので売却処理はできません。当該契約の存在は法形式ではなく、書面によるもの、口頭によるもの、売り買いの注文を同時に行うものなど、実質によって判断すべきものと解されます。

例えば、金融資産を売却した後に同一の金融資産を同一数量若しくはほとんど同一数量購入した場合又は金融資産を購入した後に同一の金融資産を売却した場合で、かつ、譲渡価格と購入価格が同一の場合、又は譲渡の決済日と購入の決済日の期間に係る金利調整が行われた価格である場合には、譲渡人が譲受人から再購入又は回収する同時の契約があると推定されます(実務指針第42項)ので、金融資産の消滅の認識要件を満たさず売却処理は認められないと考えられます。また、例えば、金融資産を売却した直後(5営業日までは直後と考えられます。)に同一の金融資産を購入した場合又は金融資産を購入した直後に同一の金融資産を売却した場合であって、それらの取引における譲渡価格と購入価格がともに取引時の時価であるからといって必ずしも売却処理が認められるわけではなく、実質的に相対取引になっていると解される等、取引の実態によっては売却処理が否定されることもあります。この他にも、金融資産の譲渡と同時に譲受人との間にデリバティブ契約を締結することなどにより、譲渡人が譲渡金融資産の価格変動リスクを実質的に負うこととなる場合には、実務指針第42項で定める「譲渡価格と購入価格が同一の場合」に該当する可能性があります。

以上の状況に照らして金融資産の譲渡取引が、実質的に金融資産の消滅の認識要件を満たしていると合理的に判断されるのであれば、当該譲渡取引は売却取引として処理してよいものと考えられます。

事実認定が難しい局面はあるかもしれませんが、少なくとも5営業日は空けなければ、実態として売却取引が成立しないと指摘される可能性がありますね。これはこの会社様に限らずですが。

確かに、売ってすぐに買い戻す取引というのは、シンプルに考えて普通は経済合理性的に「???」となります。会社としてはそれっぽい理由を整理してくる場面が多いでしょうが、まずはこの「???」という認識を持って、そしてこれを解消するに足る論理を獲得できるかが、重要ですね。監査人としては確かに。