【訂正報告書事例】亀田製菓、タイ子会社不正

亀田製菓は14日、米菓を生産するタイ子会社の不適切会計問題に関する調査報告書を公表しました。報告書では201012月から179月にかけて棚卸し資産が累計で約6億円過大に計上されていたと認定。原因として子会社の経理部以外の第三者によるチェック機能が働かないなどガバナンスや内部統制が不十分だったと指摘しました。

日経新聞より。

監査法人も重要性が高くないと認定していた拠点から出てきた不正事案のようで、本国本社としても非常に大変な対応作業だったと思います。

この事例を受けて、主として実務資料をチェックする立場の人が、実務で気をつけておくべきヒントは何か無いものかと、調査報告書の一部を読みました。

結果、非常に実務的なお話になりますが、以下について留意することが必要であるように感じました。

ある種単純な話ですが、在庫の話に限りません。見慣れぬ資産勘定の決算資料を超短時間でレビューしなければならない任務を負う方には是非ご覧頂きたいと思います。

不正の具体的な手法は以下のとおり(一部抜粋)。

本件不正会計処理の具体的な方法は、主に、棚卸資産を実態よりも過大計上することによって、売上原価を減少させ、利益を水増しする方法である。具体的な方法は以下のとおり。 (1)仕掛品td>(td>(td>(td>(td>(td>(td>(td>(td>(

各月末毎に計算される工程毎の仕掛品残高について(ただし、時期によっては、必ずしも毎月ではなく特定の月において。)、工程毎の仕掛品の残高を計算したコス トシートの合計額に任意の金額(同一の金額ではないことが多い。)を加えることに よって仕掛品の残高を嵩上げしていた。嵩上げした金額は以下の方法で確認するこ とができる。なお、以下の Arare、Senbei 及び Spiderman とは、いずれも、TKD 内における仕掛品のラインの名称である。

1 Arare ラインの仕掛品については、工程毎のコストシート(エクセルシート)の原料価格の合計額を示したセルの下に改めて同額の金額を示し、これに嵩上げ分の金額を関数上で追加している。例えば実際の計算上の合計が仮に 100 と して、5 を嵩上げしたい場合、当該セルには「=100+5」といった計算式が存在する。嵩上げされた数値は各工程ラインに按分される。

2 Senbei及びSpidermanラインの仕掛品については、まず、仕掛品の原料の合計残高に嵩上げしたい金額を足した合計額を計算し、そこから任意の工程のい くつかについて、嵩上げした金額を按分し、その額を工程毎の仕掛品明細(エ クセルシート)に上書きする方法をとっている。Arare ラインと違い、エクセル シート上に嵩上げ額を按分した金額が本来の数値の上に上書きされるので、傍 目では金額が嵩上げされたことが判別し難い。

なお、上記12のいずれの場合においても、一旦ある月に仕掛品の数値を嵩上げ したとしても、その後の月において上記の嵩上げ分の数値を追加しなければ、仕掛 品の残高は実態数値に戻ることになる。そのため、事業年度末に仕掛品について嵩 上げ分の数値を追加しなければ、仮に事業年度途中に仕掛品の数値を嵩上げした月 があったとしても、当該事業年度を通算すると仕掛品については嵩上げがされてい なかった結果となる。嵩上げした仕掛品の数値を事業年度を通じて維持するために は、上記の一旦嵩上げした数値以上の数値を毎月追加し続けなければならない。

驚愕です。特に⒈のほう!超シンプル。 100粉飾するときに、エクセルの合計欄のセルに、「+100」と入れるだけ。

これを始めてしまい、誰からもSTOPされることなく継続してしまった。

恐ろしいですね・・・。

しかしよく思い出してみると、エクセルで集計や計算をしていた際に何か誤りに気付いたものの、最初からきちんと修正する時間も無い場合、実務的にはコストシートを作製する際に最終合計値に加減算して帳尻をあわせることは、実はよくあることかもしれません。

不正ではなく、単に誤りを修正した結果であれば、監査で「この調整は何ですか?」と聞いても、普通はちゃんとした回答はかえってきそうなものです。

以上を踏まえ、チェッカーとして留意すべき点は以下になると思いました。

①エクセルで単純な値の調整をしている場合、内容は必ず確認する。 ②特に、前期も同じような調整をしている場合、不正の可能性も考慮しそれ自体の理由を確認する。

(おまけ)

ところで、実務でエクセルを使用する方ならわかるかと思いますが、そもそも上記の値のみの調整方法はかなり危険な方法です。

不正でなくても、何の修正かわからないということは、担当者の引継ぎの際にわけがわからなくなるリスクがありますし、担当者自身が数字を管理できていない可能性もあります。

時間が無いと言っても、常識的に考えてやり方が危なければ、気付いたときにアドバイスするのも必要であると思っています。

勿論、受け入れてくれるかどうかは受け手次第ですし、言い方も気をつけなければなりませんが、「MEMOを残す」だけでずいぶんと実務は安定すると思います。