期末監査期間等に関する実態調査報告書

日本公認会計士協会は、期末監査等の現場の実態を把握するために、11の監査法人の協力のもとに、2017年3月末日決算の上場会社(非金融業)200 社の監査業務についてアンケートを実施し、「期末監査期間等に関する実態調査報告書」として取りまとめ、平成30年3月15日付で公表しました。

すごく大がかりな調査になっていますが、経験者の一人として言わせていただくと、ここに記載していることはだいたい経験と合致しますね。

発見事項の要約として、以下の5つがあるようです。

1.期末日後の監査日程の具体的な日数は、単体監査開始から連結監査の期限まで平均13-15 日間程度。

また、法定監査の対象でない決算短信に対する監査人のチェックが幅広く行われている。被監査会社が決算短信公表後は決算数値の修正に応じなくなる傾向であること、過去からの慣習であること、法定監査でのチェックの前倒しとも位置付けられること、職業専門家として被監査会社の財務数値に係る公表物には関与することが当然と考えること、などの理由から決算短信のチェックをしていると推測。

⇒というか、実質的に投資家は短信で意思決定することも多いでしょうしね・・・。制度趣旨(監査の存在意義)が投資家保護であるとすれば、「法定書類ではないので見ません」という理屈が果たして通用するのでしょうか。

2.94%を超える回答者が期末監査期間の延長を要望している(∵十分な監査調書作成とそのタイムリーな査閲に遅れが生じている。)

3.期末日後に発生する監査時間が、年間を通じて発生する総監査時間の約3割に及ぶ。近年、監査の深度が深まっており、それに伴い期末監査における作業量も増加している傾向がある。一方で期末監査手続の効率化のための方策を実施しているものの、期末日後に一定の監査時間が発生することは避けられない状況にある。

⇒これは異様にチェックが厳しくなっている側面と、あるべき投資家保護の程度に近づいている側面のいずれもあるように思います。最終的には監査チームの判断になりますが、重要な内容については本部も絡んできますので、現場の負担はものすごいことになっていることも多いのでは。会社はそのあたりの事情はわからない(わかるわけにはいかない)ことが多いでしょうから、まさに監査チームからの会社や本部とのコミュニケーションが必要ですね(やるべき監査手続をタイムリーにできる環境整備のために)。

さらに言うと、今後KAMを含めた監査報告書の長文化が進んでくるでしょうから、更に負担は重くなると思います。AIがやってくれれば別だけど。

4.監査現場が逼迫していると感じている場合にも、必ずしもその状況を被監査会社の監査役等へ十分伝えていない。

5.監査時間は、①回答者が被監査会社の内部統制の不備の程度が深刻と回答した場合及び②回答者が被監査会社の経理担当のリソースの水準が低いと回答した場合に、長い傾向にある。統計的な調査によって実際に関連性があることを示した。

⇒非常に重要な事実です。根本原因は会社のリソース不足であることも多い。しかし大規模会社ならまだしも、そうではない会社で十分な決算体制を整えるのはなかなか厳しい。多くの会計士が世に放たれて久しいですが、まだまだ事業会社で活躍すべき状況にあるのではと思っています。

監査の品質の観点からの今後の課題は、監査資源(日数、人員など)及び監査報酬と、監査の品質との関係についての包括的な分析をすることのようです。