東武鉄道は子会社の元経理部長が、20年以上にわたって1億2000万円あまりを着服していたと発表しました。
有名企業の子会社からの不正事例。経理業務等を担当していた元取締役経理部長による着服。
この経理部長は架空の立て替え払いを計上するなどして不正な出金を繰り返し個人的な使途で着服していたが、経理業務を一人で担当していたため、隠蔽するための不適切な仕訳の入力、証憑類の廃棄を行うことができたとのことです。
通常、不正な支出をともなう立替金を計上した場合には滞留債権化しますので、これをごまかすために死力が尽くされます。例えば別の債権の入金で消し込んだり、別の振替仕訳でごまかしたり、です。費用化してしまう場合は同時に何らかの科目で収益(費用のマイナス)を計上することが多いでしょう。
それよりも何よりも、一番の問題はやはりすべて経理を一人で担当できたという点。20年担当が変わらないというのは、もはや不正をやってくれと言っているようなもの。取締役という立場で伝票が切れること自体、おかしいのですが。
正直そのような会社がどれくらいあるのか知りたいです。
そういえばよく監査では不正仕訳の検出を目的に、役員など通常は仕訳権限の無い者による起票を想定して不正仕訳のテストを実施します。もし同じ手続を実施していれば、「なぜ取締役がこの仕訳を切っているのですか?目的と合理性について教えてください」との議論になるところまで持って行けたかもしれません。規模の小さい会社では、役職者が起票することもあると思いますが、それでも役員が入力することは比較的まれかと思いますし、承認者の立場としてどのようなタイプの仕訳を計上することになっているのかというルールくらいは無いと、今風ではないですね。
さてこのような仕訳テストですが、監査法人による監査上は通常は費用対効果から親会社とか大きな子会社に限定されてしまいます。
監査の対応として実施は難しいとすれば、例えば小さな子会社の仕訳検証は誰がやるのかというと、通常は内部監査部の方か、経理部・管理部の方になるでしょう。仕訳データ入手のためにシステム部門の協力は欠かせないと思いますが、経理担当を一任していて、かつ担当が長い会社がある場合は、やる価値はあると思います。
このように、会社が自らリスクを考えて事前予防を広げていくことで不正を防ぐというアクションは、私はとても大切だと思います。