KAMは、日本でも2020年3月期から早期適用されることが見込まれています。
そこで、EDINETに掲載されている、外国会社の適用事例を見ておきたくなったので、いくつかの事例を以下に記載したいと思います。
国家によって、深度や細かさに違いがあると思いますが、
ざっくりとどのような開示がされているか、監査報告書を見ていきたいと思います。
株式会社ケーティー(韓国、通信サービス)
監査上の主要な検討事項
(1) 料金請求システムを通じて計上される通信サービス収益の認識
– 監査上の主要な検討事項として指定した理由
財務諸表に対する注記2に記載した通り、連結会社は顧客との契約における履行義務を識別し、個々の履行義務を充足した時点で収益を認識している。連結会社は多数の顧客に多様な料金プランを適用した通信サービスを提供しており、通信料金の算定、請求及び回収は料金請求システムを通じて行われている。
料金請求システムで生成された情報は収益認識のための会計処理の基礎資料として活用されており、これを通じて発生した収益が連結財務諸表において占める金額は重要である。
したがって、料金請求システムを通じて計上される通信サービス収益の発生事実を監査上の主要な検討事項として識別した。
– 本監査で監査上の主要な検討事項を取り扱った方法
本監査人は、料金請求収益の認識に対する統制テストと実証テストを並行して行い、本監査上の主要な検討事項に対する監査手続を実施した。
本監査人は料金請求に関連するIT(information Technology)環境に対する評価を行い、連結会社の内部統制の設計及び運営の有効性をテストした。
・ 料金請求システム上の顧客基準情報の生成及び変更に係る統制活動
・ 料金請求システム上の顧客使用料情報の集計に係る統制活動
・ 料金請求システム上の料金請求及び回収に係る統制活動
・ 料金請求システムと会計システム間のデータ・インターフェースに係る統制活動
また、本監査人は標本抽出を通じて料金請求システムに記録された契約事項、サービス使用実績、請求情報などに対する実証テスト手続を実施した。
(2) 企業会計基準書第1115号「顧客との契約から生じる収益」の導入による収益認識変更の適正性
– 監査上の主要な検討事項として指定した理由
連結会社は2018年1月1日から基準書第1115号「顧客との契約から生じる収益」を適用している。基準書第1115号の経過規定により、比較表示された連結財務諸表には遡及適用されておらず、適用開始による累積的影響額9,676億ウォンを2018年1月1日に利益剰余金として認識した。
本監査人は、連結会社が新基準書に合致する収益認識に関する会計方針を策定したかどうか、及び、策定された会計方針に基づいた財務的影響額の算出の正確性を監査上の主要な検討事項として識別した。同基準書の適用が財務情報に及ぼす影響については注記37で説明した。
– 本監査で監査上の主要な検討事項を取り扱った方法
本監査人は、基準書第1115号の当初導入に関連する連結会社の内部統制制度に対する理解及び評価に基づき、以下の手続を含む統制テストと実証テストを実施した。
・ 連結会社が策定した会計方針が基準書第1115号に合致するかどうかを評価
・ 新収益認識基準を適用するための連結会社の財務情報システムの変更に対する理解及び評価
・ 新収益認識基準を適用するための連結財務決算に係る内部統制の設計及び運営の有効性に対する評価
・ 標本抽出により、新基準書の導入が期首及び当期の連結財務諸表に与える影響を実証監査
収益に関して、大きく2点触れられておりますね。
収益認識に必要な情報の生成過程と、新収益認識基準の正確な適用について、KAMが認識されている形になります。
これに対しては、淡々と行った手続を記載しているという印象ですね。
特に目立った風変わりな記載はありません。
モンクレール・グループ(イタリア、ファッション)
のれん及びモンクレール商標権の回収可能性
監査上の主要な検討事項 | 監査上の主要な検討事項に対する監査手続 |
2018年12月31日現在、連結財務諸表には、帳簿価格224百万ユーロの耐用年数を確定できない無形資産であるモンクレール商標権(以下「商標権」という。)及び156百万ユーロののれんが含まれている。
モンクレール・グループは、少なくとも年に1回、報告日に商標権及びのれんの回収可能額を確認している。 商標権及びのれんの回収可能額は、予想キャッシュ・フローを割り引く方法を用いて使用価値を見積ることにより算出される。具体的には、商標権の場合はロイヤルティ免除法が適用されている。 これらの方法において、以下については経営者の高度な判断が求められる。 ・予測キャッシュ・フロー。一般的な景気動向やモンクレール・グループが属する業界の経済状況、近年の実績キャッシュ・フロー及び予測成長率を踏まえて算出される。 ・割引率を算出するために使用された金融パラメータ 上記の理由により、当監査法人は、商標権及びのれんの回収可能性は監査上の主要な検討事項であると判断した。
|
当監査法人が実施した監査手続(当監査法人の専門家の利用も含む。)には以下が含まれる。
・減損テストのプロセスを理解する。 ・減損テストに用いられる予測キャッシュ・フローの基礎となる、2017年12月14日に親会社の取締役会で承認された2018年-2020年度の中期経営計画、2018年12月18日の取締役会で承認された2019年度予算、及び当該計画と予算に用いられた主な仮定に基づき算定された2020年度及び2021年度予測キャッシュ・フローの作成プロセスを理解する。 ・前年の事業計画と実績の乖離の分析を含め、予測キャッシュ・フローの見積りに経営者が用いた主な仮定を分析する。 ・商標権とのれんの回収可能額を判断するために経営者が用いた主要な前提条件と減損テストモデルの合理性を分析する。 ・金利や定常成長率等、減損テストのために用いた主要な前提条件に関して注記に記載した感度分析を確認する。 ・商標権、のれん及び関連する減損テストについて注記の開示した内容の妥当性を評価する。 |
棚卸資産の評価
監査上の主要な検討事項 | 監査上の主要な検討事項に対する監査手続 |
2018年12月31日現在の連結財務諸表には、173百万ユーロの棚卸資産(104百万ユーロの棚卸資産の評価減との純額)が含まれている。
棚卸資産の評価減に伴う引当金の測定は、複雑な会計上の見積であり、以下を含む多くの要素が影響するため高度な判断を要する。 – グループの属する事業セグメントの特徴 – 売上の季節的要因 – 採用された価格政策及び流通チャネルの販売能力 上記の理由により、当監査法人は、棚卸資産の評価は監査上の主要な検討事項であると判断した。 |
当監査法人が実施した監査手続には以下が含まれる。
– 棚卸資産の評価プロセス及び関連するIT環境、並びに主要な内部統制の運用状況を評価する統制及び手続の整備及び適用状況を理解する。 – 当期の棚卸資産の変動状況を確認する。回転期間及び季節ごとの過去の売上実績及び収益性の分析を基にした想定ライフサイクルを考慮する。 – 商品の販売予測の前提条件を理解するために、関係する内部の部署に質問すると共に棚卸資産の評価減に対する引当金の算出に係る文書を分析する。 – 棚卸資産に関する注記の開示内容の妥当性を評価する。 |
こちらはのれんと棚卸資産に関してKEYがついています。
見積のリスクが高いことから、これに監査上どのように対応したかという点が中心に記載されていますね。
しかし、見積といえば、バックテスト(見積額と実績の乖離の検証)が重要ではないかと思うのですが、
そちらについては特に記載はありませんでした。
あと、注記についても手続を実施したという点が明示されています。
今回の2社については、正直ミニマム開示に近い事例ではないかと感じています。
EDINETに掲載される事例としては、金融機関が多い印象ですが、こちらのKAMについては凄まじい量になっています。
報酬も多いからかもしれませんが、会社や業種によって色が出そうですね・・・。
ミニマム開示で済ますことができる会社であれば、それほどの分量は無いかもしれませんが、
何を記載するかについて、細かいルールややり取りが発生すると思われますので、
明らかに時間はかかると思います、特に初年度は。