デメリットの1つ目は、監査調書に追い詰められている点をお話しました。
2つ目のデメリットもこれに関連しますが、自分の時間を持ちづらい点が挙げられます。
要はやることが多すぎて、プライベートの時間がなかなか取れないという点です。
昔、まだ四半期決算やJ-SOXも無い頃、すなわち制度的に求められていたのが中間決算と期末決算だけの時代は、忙しいながらも繁忙期と閑散期のバランスがうまく取れていました。忙しい時期は思いっきり働いて、そうでない時期は思いっきり休んで遊ぶという働き方が可能でした。これは、今で言うワークライフバランスが取れている状態とも捉えることができるかもしれません。なので、忙しいながらも、頑張って監査業務を前向きにこなす会計士が多かった気がします。言うなればアメとムチ状態でした。
しかし最近においては、従来の作業に加え、
✓人手不足
✓四半期決算の導入による年中繁忙期状態
✓J-SOXの導入による作業や検討事項の増加(不備の評価など)
✓会計不祥事により増加した各種レビュー対応、及びその対策
✓紙調書から電子調書への移行に伴う調書作成期間の厳格化による作業の集中
(監査報告書日のあと一定期間内にすべての作業を完了しなければなりませんが、これがかなり大変)
✓IFRS導入をにらんだ各種アドバイザリーや新基準対応
などによる多重的な要因により、多くのマネジャー、シニア、スタッフが連日長時間勤務を余儀なくされている状況かと思います。
・スタッフはある日において現場で割り当てられた作業をこなした後、確認状や事務的作業のために事務所に戻ったりする必要があり、また翌日翌週の作業の予習なども必要になることも多いため気がついたら夜10時とか11時の日々などというのはざらです。
・シニアは現場で作業の割り振りや進捗管理、会社からの質問・論点対応、上司への報告相談、自分の作業(科目調書)をこなしてヘトヘトになった後、事務所に戻って社内ミーティングの準備やら、抱えている間接業務(研修講師の準備や自主研修の課題など)をやりまくって気がついたら夜10時とか11時の日々が普通の日です。
・マネジャーはクライアントからの質問対応や社内の専門部署やパートナーからの問い合わせに対応しつつ、契約関係、国内外の他のチームとの調整やミーティング、チームに必要な事務的作業関係をやりまくり、また事務所の間接業務(研修講師の準備、英語などの研修の課題、各種プロジェクトの社内ミーティングの準備など)もシニア以上に数多くこなす必要がありますので、毎日10時とか11時の時期が多くても普通くらいのレベルです。家が遠い人なら12時帰宅の就寝1時とかになりますので、平日はほとんど家族と時間を取れない事も多いかと思います。
最近はワークライフバランスが叫ばれており、いろいろな施策を法人側が考えるということも多くなってきていると思いますが、本質的には人手が足りず、なかなか解決には至っていない状況かと思います。法人が悪いとかそういう話ではなく、業界全体が悲鳴をあげているイメージです。
プライベートの時間を大切にしたい人は、上記の作業量に耐えられず、退職という選択をする人もいるでしょう。
実際は、コンサルファームなどに比べればかなりマシなほうだそうですが、一生続けてこのペースで働くことが出来る人とそうでない人に分かれるのは確かかと思います。もともとプロの誇りをもって仕事をしている部分もあるので、一概に悪いとは言えません(自分から進んで自分を追い込んだほうが成長するとポジティブにとらえることも可能)が、監査法人で働く人(働こうとする人)は事実としてプライベートはかなり犠牲になることも多いということを、よーく認識する必要があります。
これらを解決するには、本質的には以下の対応をしていくしか無いのではと思います。
・人手を増やす
・やるべき業務を減らす