【訂正報告書事例】 のれんとDTL (株)ナック

株式会社ナックは、平成29年3月期の内部統制報告書において、平成29年3月期における財務報告に係る内部統制に開示すべき重要な不備があり、当社の財務報告に係る内部統制は有効でない旨を記載している旨を発表しています。

注目したのは、その理由。

本案件は、平成26年3月期の第2四半期に行った株式会社JIMOS取得時の会計処理に発生頻度の少ない非定型的な取引であったため、会計上の「二重責任の原則」は承知しつつ、監査法人の助言に基づき処理した会計処理の誤りが原因であります。当該誤りは、発生頻度の少ない非定型的な取引に関する内部統制が適切に整備できていなかったことに起因したと言えます。

2重責任の原則からは、当然に会社が財務諸表を作成する責任を負う。それはわかったうえで、会社は難易度の高い論点について監査法人に確認している(それ自体は内部統制の不備には該当しません)。

しかし残念ながら、監査法人の指導内容に誤りがあったということですね。ここまではっきり書かれているので、会社は相当怒り心頭というのが伝わってきます。どうも監査法人内のパートナー交代の際に誤りに気付き、新しいパートナー体制時に会社へ伝えたようですね。会社にとってみれば、寝耳に水というか、過去の適正意見は何だったのかと。

肝心の処理誤りの内容ですが、発表されている内容だけでは詳細はよくわかりませんでした。ただ、のれんとPPA無形資産、及びその税効果に関連する論点で、償却費や税効果に誤りがあったようです(のれんとPPA無形資産の入繰か?少なくとも金額からして、PPA無形資産の税効果は漏れていた模様)。

さてこの騒動を受けて、会計監査人の異動が平成29年7月26日に発表されています。異動の理由については以下の通り述べられています。

お知らせいたしましたとおり、株主総会開催日の前日に公表数値の一部訂正をし、投資家の皆様には多大なご心配をお掛けしました。訂正後の連結財務諸表及び個別財務諸表につきましては、新日本有限責任監査法人による会計監査を受けて、無限定適正意見を付した監査報告書を受領いたしました。
その後、当該訂正の状況を含め新日本有限責任監査法人の監査対応等について協議した結果、当社より監査契約の解約を申し入れました。そして、本日付で同監査法人の会計監査人退任について当社と同監査法人の間で合意しました。

会社側からはっきりと解任を申請したように読めます。

「監査対応等について協議した」というところが意味深です。こういう場合、監査法人からの言い方・説明の仕方・謝り方というのは非常に重要です。

情報が限定的ですべて推測になってしまいますので特にコメントはできませんが、我々会計士としては常に正しい情報を適時にクライアントに提供し、誤りなく指導できるよう全力で取り組むしかありませんね。

個人的には他人事と思わず、兜の緒を締める必要があると思いました。