日経新聞より。
買収した子会社の連結化にあたって林地など資産の時価評価を巡り会計監査人のPwCあらた監査法人から疑義が指摘されているようです。
訂正の可能性にも及ぶお話のようですが、王子HDは昨年6月、会計監査人を新日本監査法人からPwCあらた監査法人に変更していたようで、どこかの会社と同じような状況になっています。
資産の時価に関しては、会社は通常、外部の専門家に依頼して算定します。不動産であれば、通常は鑑定士になるでしょう。
その評価結果は、物件の重要性にもよりますが、監査法人がレビューすることになります。
その際、監査法人も自社や外部の専門家に依頼する形で鑑定評価を間接的に評価します。
本件は、この監査法人の評価において議論になっているものと思われます。
たしかに、会社が利用する専門家の業務を見ていて、「?」という評価結果が出てくることはあります。というのも、不動産の鑑定であれば、簡易鑑定の類もよく利用されるため、前提とか計算方法がかなり粗々なことがあるからです。
本件がどのレベルで疑義があるのかわかりませんが、上記以外にも、そもそも前提条件や計算過程が誤っていたり、専門家の独立性に疑義があるなどで評価に恣意性があったり、色々な論点があるのかもしれません。
個人的には、何故そうなってしまったのかという、具体的なところが大切だと思っていますので、可能であれば知りたいですね〜。
帝国データバンクは2017年(1月~9月)に会計監査人の異動に関する適時開示を行った国内上場企業について、株式上場している市場や就任・退任する監査法人の名称、異動理由などについて調査、公表しました。新日本からの流出が激しいですね。東芝案件が大きなきっかけになっているのでしょうけど。アンケートを取らないで真実を見極めるのは難しいと思うので、先日の、JICPAによる交代理由の調査結果も見ながら眺めるのが良いかと。傾向としては、監査報酬の高さと、グループにおける監査人の統一ですね。しかしこの交代の話を見ながら思ったのですが、「是非来年もうちの監査を宜しくお願いします。他の法人のことはわからないけれども、本当に良い監査をして頂いて助かっています。」と、クライアントから言われるには、どうしたらいいのでしょうね。1つは、「会社を正しく指導すること、導くこと」ではないでしょうか。外部の視点で見て、おかしいところがあれば言って下さい、といったニーズは普遍的です。誤謬に気づくことから始まり、あるべき姿は何なのか、それを実現するには実務的にどのようにするのが合理的なのかなどのアドバイスまでを通じて、クライアントとコミュニケーションを、適時に取ることが大切ですよね。そんなの当たり前じゃない、と思いそうなところですが、その当たり前を着実にこなしていくことが大切かなと。というか、監査という仕事は、当たり前を当たり前にできるかどうかが勝負です。ウルトラCを狙うのも時として必要ですが、大切なのはやるべき事を、やるべきタイミングで、です。コミュニケーションは、適時性が大切ですよね。常にタイムリーヒットを飛ばせというわけではないですが、「それを今言うか?!」とクライアントから言われる事を減らす努力をしないと、伝わる話も伝わりません。難しい話、ややこしい論点は、どうしても後になって気付くこともあります。(実務の世界では、最悪、気づかずに過ごしてしまうリスクもあるわけですが(−_−;))適時にコミュニケーションを、などとよく言われますが、実務ではなかなか難しい所作です。気が抜けないし。そんなことを感じた記事でした。