以前投稿したように、13年3月期に連結化した海外子会社の会計処理を巡って監査法人から疑義を示されたことを理由に、王子HDは4~9月期決算の発表を延期しました。12月14日に過年度分の有価証券報告書や四半期報告書の訂正報告書を関東財務局に提出した模様です。
日経新聞より。
今回の訂正理由は少し見慣れない論点で特殊ですが、そのような論点だからこそ慎重に検討しなければならないことを考えされられるテーマです。
(注)以下は、筆者の推測も交えて記載していますので、その限りでお読みください。
具体的には植林資産(山林)の会計上の償却(減耗償却含む)についてです。
王子HDの発表によると、以下のように記載されています。
過年度における企業結合時に時価評価した植林資産のその後の会計処理について、時価評価差額(当時の簿価と時価の差額)を取り崩さず評価を据え置いていましたが、改めて検討した結果、当該時価評価差額については植林の伐採に応じて取り崩すこことし(以下略) |
植林資産というのは、製紙業からすれば原料になると思いますが、おそらく山林に近いものかと。
山林の会計処理については、連続意見書において、減価償却方法として以下の記載があります。
連続意見書第三有形固定資産の減価償却について(昭和35.6) | 第一 企業会計原則と減価償却 六 減価償却計算法 | 2 生産高を配分基準とする方法
生産高(利用高)を配分基準とする方法には生産高比例法がある。この方法は、前述のように、減価が主として固定資産の利用に比例して発生することを前提とするが、このほか、当該固定資産の総利用可能量が物質的に確定できることもこの方法適用のための条件である。かかる制限があるため、生産高比例法は、期間を配分基準とする方法と異なりその適用さるべき固定資産の範囲が狭く、鉱業用設備、航空機、自動車等に限られている。 なお、生産高比例法に類似する方法に減耗償却がある。減耗償却は、減耗性資産に対して適用される方法である。減耗性資産は、鉱山業における埋蔵資源あるいは林業における山林のように、採取されるにつれて漸次減耗し涸渇する天然資源を表わす資産であり、その全体としての用役をもって生産に役立つものでなく、採取されるに応じてその実体が部分的に製品化されるものである。したがって、減耗償却は減価償却とは異なる別個の費用配分法であるが、手続き的には生産高比例法と同じである。 |
会社が林業なのかはわかりませんが、紙の原料採取のために山林を取得し、日々その一部が製品化されているならば、減耗償却が最も実態に合った償却方法となる可能性はあります。
もちろん、定額法などその他の方法が適しているのかもしれません。
重要なのは、「山林って償却するのね」と把握する(思い出す)ことかと思います。
その点、本件は連結財務諸表において、時価評価後の山林が(減耗)償却されず、据え置かれていたためその点がおかしかったという話かと推測しています。
(時価評価を据え置くのが×という文面から、「評価差額見合については合併後に費用計上するべきだった」と読めました)
この話で思うのは、まず山林の特殊性(土地に近いけど償却することがある)に気付かなければならないという難しさがあることです。
土地でもあるので、償却は必要ないと考えることもあるのかもしれませんが、(植林には時間がかかるし)そのような考え方は今回の実態とは乖離していたということかと思います。
見慣れない論点は、非常に怖いです。
正体を突き止めて、あるべき処理を検討しなければならないので、時間もかかります。
でも、時間がなくても、「そういえば山林の処理で気をつけることは何だったかな」と少し考えてみるステップが大切だということかと思います。
その「少しのこと」が大切ですよね。
このように、新しい目で見ることで、これまで常識だと思っていた処理が実は違っていたことに気付くというのは、あり得ることですね・・・。
一度深呼吸してフレッシュな視点で見てみることも、非常に大切ですね・・・