【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】世紀東急工業 JVとの取引消去

世紀東急工業株式会社は、平成 30 年 5 月 10 日に、過年度の連結財務諸表等に関する誤謬の判明のお知らせについて公表しています。

その内容が詳しく公表されております(以下若干字句修正)。

会社は、建設事業と舗装資材製造販売事業を主要な事業内容としており、各事業間において、日常 的に、当社の工場で製造・供給する舗装材料を、当社の請負工事で調達・使用する内部取引が行われている。

通常の当社の会計処理において内部取引が売上高及び売上原価として計上されることはないが、従前より共同運営する工場(以下「JV工場」といいます。)を当社ではない他の事業体と認識しており、その損益は出資比率に応じて出資者に帰属するため、JV工場の売上高及び売上 原価の出資比率相当額を、決算上、当社の売上高及び売上原価に加算していた。

今般の 作業過程において、会社がJV工場から購入した資材に係るJV工場の売上高及び当社の仕入れに関連した売上原価については、会社の損益計算書及び連結損益計算書において相殺消去すべきではない かとの疑念が生じました。

JVは確かに会社とは別の事業体ですが、JVに帰属する損益は結局出資者である会社に帰属するものであるため、JVの損益から会社に帰属させた会社に対する売上は、会社がJVから仕入れた売上原価と相殺すべきだった、というストーリーに読めました。

「JVそのものは外部」という固定観念から、実態を反映する仕訳が計上されていなかったようにも読めますが、確かに意外に盲点かもしれません。

これを相殺消去しなければ、JV工場の売上として、売上の過大計上ができることになりますね(その分原価が計上されるはずなので、損益影響は薄まりますが)。

このような場合、関連する論点にも注意が必要です。

棚卸資産の未実現損益の調整や、これに応じた税効果が必要になるかもしれません。

なお上記には記載していませんが、本論点は、会社が発見(そもそも論として後から気付いたのでしょう)して、監査法人に相談し、協議したうえで発表されたように読めます。

連結取引については、ややこしい形になることも多いです。

個人的には、図に書いて整理することをおすすめします。

この点、あらためて私も心がけるようにしたいと思います。

時間が無くて面倒でも、やれば取引関係が整理されます。整理するだけでいろいろと見えてきますので。

特に取引が始まった期に気付いて対処できるかが勝負ですね。

 

 

 

 

 

監査人は新日本有限責任監査法人。