あまり見ない事例ですが、今回のケースは、取引自体が誤っていたものかと。
通常は、取引自体は適法に成立しているが、その財務報告が誤謬や不正により歪められるというパターンによって訂正報告書が出されます。
しかし、本件は、おおもとの取引自体に問題があったもののように読めました。
Contents
案件概要
概要は以下の通り。
1.追加支払いの概要
当社では、サービス提供に関し他社ソフトウエアの使用許諾を受けており、利用ライセンス に関する契約を締結しております。 本契約に関して、平成29年12月からライセンサーの委託を受けた監査法人による使用ライセ ンス数に関する調査が行われました。 本契約では、当社が毎月使用したライセンス数を報告する形式となっており、当社はこれまで当社サービスの実際の利用数に応じた報告を行っておりました。 一方、調査の過程で、報告すべきライセンス数は、当社が、顧客に対してサービスを利用しうる状態にしたIDの発行数であるとの指摘を受けました。 |
考察
要するに、ライセンスの契約内容に照らして、ライセンス利用者である会社が費用処理するべき(支払うべき)契約件数に不足があったようです。
ライセンスの使用の定義(費用の発生)に関する認識の相違があったように読めます。
会社の主張は、ライセンス使用=顧客が会社のサービスを実際に利用したときと考えている。
しかし、調査官およびライセンサーの主張では、ライセンス使用=顧客に対してサービスを利用しうる状態にしたときであると考えている。
これ以上の詳細な内容は、契約内容や法的見解を交えて議論が必要なところなのでしょうが、
ライセンサーの立場にたてば、会社が売上を発生させられるまでライセンス収益を得られないというのは非常に不利な話ですので、ライセンサーとしてはそのような意図で契約をしていなかったということかもしれません。
ライセンサーの債権管理の中で、入金が妙に遅いとか、そのような経緯で調査が開始されたのかもしれませんね。
今回の”学ぶ”
この案件からは、”ライセンス契約の契約当事者の意図どおりに取引が行われ、これに会計処理がマッチしているかどうかを確認すべし”という教訓を得られます。
何らかの権利に対して支払いを起こしている場合、注意が必要ですね。