自動翻訳(google、DeepL、みらい翻訳)で会計英語を日本語訳してわかった3つのこと

自動翻訳(google、DeepL、みらい翻訳)で会計英語を日本語訳してわかった3つのこと

はじめに

こんにちは。

今回は、最近話題の人工知能を駆使しているとされる英語翻訳ツールについて、実際に試してみた結果について共有させていただきたいと思います。

会計(IFRS)に関する小難しい英文でも、どれくらい日本語訳版に近い訳ができるのかを確かめてみたいと思います。

会計界隈のお仕事をされている方で、以下のように翻訳ツールを気にされている方は是非見ていってください。

●業務上、日本語の資料がなく、英語の会計文書にあたって調査をする必要性が生じた方
●IFRSの日本語訳で業務をしているが、英語版に立ち返って意味解釈を確認したい方

●大量の英文を読む必要があって、大枠を日本語で素早くキャッチするために翻訳ツールを使用しているが、Google翻訳に不安を感じている方

使用した翻訳ツール

今回は、最近よく聞く3つの翻訳ツールを使ってみたいと思います。

原文は、ちょっと何を言っているか分かりづらいIFRS16にします。

使用する原文:IFRS16
ツール1:Google翻訳
ツール2:DeepL
ツール3:みらい翻訳

例文1

早速、例文をもとに翻訳結果をみていきます。

まずは例文ですが、まずはこちらにしました。

例文1 IFRS16.18
原文
An entity shall determine the lease term as the non-cancellable period of a lease, together with both:
(a) periods covered by an option to extend the lease if the lessee is
reasonably certain to exercise that option; and
(b) periods covered by an option to terminate the lease if the lessee is
reasonably certain not to exercise that option.
日本語訳(Redbookより引用)
企業は、リース期間を、リースの解約不能期間に下記の両方を加えたものとして決定しなければならない。
(a) リースを延長するオプションの対象期間(借手が当該オプションを行使することが合理的に確実である場合)
(b) リースを解約するオプションの対象期間(借手が当該オプションを行使しないことが合理的に確実である場合)

下線部は当方で引いてみたポイントとなるであろうところですが、早速訳してみます。

Google

まずはGoogleから。

Google翻訳
企業は、リース期間をリースのキャンセル不可期間として、以下の両方と決定するものとします。
(a)借手がそのオプションを行使することが合理的に確実である場合に、リースを延長するオプションによってカバーされる期間。 そして
(b)借手がそのオプションを行使しないことが合理的に確実である場合に、リースを終了するオプションの対象となる期間。

なんとなく訳せてそうな雰囲気です。

「合理的に確実」というキーワードも無事翻訳されています。

ただ、下線部についてウソついちゃってるように見えます。

リース期間=解約不能期間+(a)+(b)というのが正解なのですが、

この訳だと、リース期間=(a)+(b)という風に読めます。

これは厳しい誤訳ですね。

DeepL

ではDeepLはどうでしょうか。

DeepL
企業は、リース期間をリースの解約不能期間とし、以下の両方を併せて決定しなければならない。
(a) 借手がそのオプションを行使することが合理的に確実である場合に、リース期間を延長するオプションが付されている期間。
(b) 借手がそのオプションを行使しないことが合理的に確実である場合に、リースを終了するオプションの対象となる期間。

なるほど・・・

解約不能期間としたうえで、”(a)(b)をあわせて決定”ということで、ウソではないですよね。

ただ、”(a)(b)を加えたものとして決定する”とハッキリ書いているのが本来の訳(意味)ですから、そのように訳さないと読んだときに意味を誤ってインプットしてしまいそうです。

この英文「together with both」が難しい表現だと思います。

確かに、直訳するとDeepLの訳に近くなります。

誤りではないものの、読み違えや勘違いは起こるレベルというところでしょうか。

しかし噂通り、Googleよりは正確で自然な訳になっているとは思います。

おおきく内容をキャッチする(どういう感じの事が書いてあるか雰囲気をつかむ)目的では、大きな問題はないと思いました。

しかし、例えば実務解釈のような正確な意味内容の理解が求められる段階でDeepLを妄信してしまうと、足をすくわれそうな気がしますので注意が必要と思いました。

みらい翻訳

最後に、「みらい翻訳」も追加してみたいと思います。

みらい翻訳
企業は、リース期間を解約不能のリース期間として、以下の両方とともに決定しなければならない。
(a) リース期間の延長オプションが適用される期間
そのオプションを行使することが合理的に確実である;および
(b) 借手がリース契約を終了させるオプションを行使しないことが合理的に確実である期間。

together with both」のところは、DeepLと似たようなニュアンスになっていますが、こちらのほうが本来の意味に近く、そして自然だと思います。

いやむしろ、こちらが最も正解に近い気がします。

リース期間を、解約不能期間として、(a)(b)の両方とともに決定するという表現は、誤解が少ないし、正直正解に近いと思います。

ただ、(a)が変な感じに・・・同じ条件で他の二つがいい感じに訳してくれているので、少しもったいないですね。

結果

ということで、例文1に関しては、個人的には「DeepL」を推したいと思います。

例文2

さて次に、例文2に移ります。

今度はもっとよくわからない文章にします。

例文2 IFRS16.70
原文
At the commencement date, the lease payments included in the measurement of the net investment in the lease comprise the following payments for the right to use the underlying asset during the lease term that are not received at the commencement date:
(a) fixed payments (including in-substance fixed payments as described in paragraph B42), less any lease incentives payable;

日本語訳(Redbookより引用)
開始日において、正味リース投資未回収額の測定に含められるリース料は、リース期間中に原資産を使用する権利に対する下記の支払のうち開始日に受け取っていない金額で構成される。
(a) 固定リース料(B42項に記述している実質上の固定リース料を含む)から、支払うリース・インセンティブを控除した金額

IFRSの英語は概して読みやすい方ではないかと思うのですが、こちらはそもそもがわかりにくい条文です。貸手のリースなので、そもそもマニアックだという難しさもあります。しかしAIはマニアックだからという理由で逃げられません(可哀想ですが…)。
なお、本条文においては実際は(a)~(e)まで羅列がありますが、今回は(a)のみ記載しています。
大きな文構造としては、「××のリース料は、(a)~(e)のうち開始日に受け取っていない額で構成される」という意味になります。

Google

さて、そんな例文2ですが、Google先生はどのように翻訳しますでしょうか。
Google
開始日に、リースへの正味投資の測定に含まれるリース料は、開始日に受領されないリース期間中に原資産を使用する権利に対する以下の支払いで構成されます。
(a)固定支払い(B42項に記載されている実質的な固定支払いを含む)から支払うリースのインセンティブを差し引いたもの。
ほぼ訳せています!すごい。

DeepL

次は、DeepL
DeepL
開始日において、リース投資の純額の測定に含まれるリース料は、リース期間中の原資産の使用権に対す る支払額のうち、開始日に受領していないものは、以下のとおりである。
(a) 固定支払金(B42項に記載されている実質的な固定支払金を含む)から、未払のリースインセンティブを控除した金額。
下線部が、うまく訳せていませんね・・・。その結果、全体として文法的におかしな日本語になっています。
ここはGoogleに軍配が上がるかと思います。

みらい翻訳

最後に、みらい翻訳。
みらい翻訳
リース開始日において、リース資産の純投資額に含まれるリース料には、リース期間中に原資産を使用する権利に係る次に掲げる支払金であって、開始日において受領していないものが含まれる。
(a) 固定支払額(B 42項に記載されている実質的に固定された支払を含む)から支払リース料を控除した額;
下線部が、”構成される”とは若干異なりますが、
これは、compriseに、「含まれる」という意味があるためかと思います。
なので、意味が大きくことなることはないレベルかと思います。

結果

ということで、例文2はGoogleが最も正解に近かったですが、みらい翻訳も正解に近いニュアンスは出せています。

実際に自動翻訳してみてわかったこと

(1)日本語翻訳の自然さでは、「DeepL」・「みらい翻訳」に親しみを持てたが・・・

単純な翻訳精度では・・

この記事ではたった2つの例文しか見ていないのですが、他にもいろいろと訳させてみた結果、個人的には「みらい翻訳」>=「DeepL」>Googleの順で自然な訳が出来ていると思いました。
ただ、どれかが完ぺきな翻訳ツールという感じでもないですね。Googleが良い訳を示すこともあります。
比較的自然な訳が出来ているかどうかという点で、個人的には「DeepL」・「みらい翻訳」がベターかなという、そんな程度です。
なのでこの2つを併用すれば、それなりに使えそうです。
ただし、Googleには2つの大きな特徴があります。

Google翻訳の凄さ

Google chromeで真価を発揮
Googleは、ブラウザを「Google chrome」にして拡張機能を実装すると、長い英文でも一瞬ですべてそれなりの精度で和訳してくれるので、それはそれで大変使い勝手がよいです。大量の英文を目の前にすると、時間の無いときはざっくりとでもまず大枠を掴みたいと、普通の人なら思いますよね!?
なので、Googleが他の2つくらいに進化した暁には、かなり強力なツールになるのではと感じています。ちなみに、「Google chrome」の拡張機能の詳細はこちらです。
無料でPDF読めるのはすごい
さらに、GoogleはWordだけではなく、PDFファイルをそのまま読み込んで全体和訳できますので、これがまた非常に使える機能になっています。
こちらの詳細は、Google翻訳にて、「ドキュメント」とあるところをクリックするだけで無料でPDFを読み込んで翻訳できます。

(2)自動翻訳に任せっきりは非現実的

今回翻訳してわかったのですが、やはり会計は専門用語や独特な言い回しが多くなるからか、自動翻訳に和訳させて実務でそのまま突っ込んでいくというのは、ちょっと怖いというか、現実的ではないと感じました。

そのため、当然のことからもしれませんが、理解が必要なところなど、業務上外せない箇所についてはかならず原文を参照していくという作法が必要になると思います。

現段階で、原文参照は避けられそうにありません。

勿論今後、機械学習によって精度はどんどん向上していくでしょうから、そこは大いに期待したいです。AIが頑張るほど、人間の業務はラクになっていきますね。

(3)セキュリティには十分に注意する

翻訳サイトは便利ですが、翻訳のプロセス・情報はサイト側に蓄積されてしまうことがあるようです。

一般に公表されている英文を個人で利用するには良いのかもしれませんが、

非公表で、オープンにしてはいけない情報、例えば個人情報やインサイダー情報などは、流出リスクがあるので十分に留意する必要があると思います。

場合によっては翻訳方法を一部分だけにするよう工夫するとか、あるいはそもそも自動翻訳はしないという方法で、「自分を守る」ことが必要になると思いました。

おまけ

自動翻訳は、対象となる英文をコピーして、翻訳サイトにペーストすることが多いと思います。

しかし、英文をそのままコピーすると、以下のように改行がおかしくなることがあります。

IFRS16.18
An entity shall determine the lease term as the non-cancellable period of a
lease, together with both:
(a) periods covered by an option to extend the lease if the lessee is
reasonably certain to exercise that option; and
(b) periods covered by an option to terminate the lease if the lessee is
reasonably certain not to exercise that option.

これは、黄色でハイライトした文字の次で自動的に改行されていることを示しています。

その結果、例文1の訳が以下のようにおかしくなります。

みらい翻訳
企業は、リース期間を解約不能期間として決定しなければならない。
リースとその両方:
(a) リース期間の延長オプションが適用される期間
そのオプションを行使することが合理的に確実である;および
(b) 賃借人が
そのオプションを行使しないことが合理的に確実である。

これでは本来の自動翻訳の実力を発揮できません。

しかし、わざわざ改行を手直しするのは面倒です。

そこで、何かないかと探したところ、「shaper」というwebアプリに到達しました。

これはどうも、自動で改行を修正してくれるツールのようです。

コピペして翻訳する時に、便利です。

ただし、先ほど述べたセキュリティリスクが常にあることは変わらないと思います。秘匿性の高い文書はそもそも翻訳しないことが無難です。

それでは、また。