大庄は、以下のプレスリリースを発表しました。内部統制の開示すべき重要な不備に該当するとするものです。
期末日時点で不備が残存している理由は、有報作業中に会社が気付いたからだそうです。
訂正内容は、土地再評価法により再評価を行った土地について、再評価前の取得原価をもとに減損損失等を計上し、土地再評価差額金の取崩額を特別損失に含めて計上していたが、有価証券報告書作成時にその他利益剰余金(株主資本等変動計算書)に直接計上する処理が正しいことが判明し、修正することとした、というもの。
(借方) その他利益剰余金 / (貸方) 再評価差額金
とすべきところ、
(貸方) 減損損失 / (貸方) 再評価差額金
としてしまったと。
訂正内容を見ていると、再評価差額金の増減をその他包括利益にも入れてしまっていたようですね。
本案件は、担当者の方、監査人ともに対応が大変だったと思いますが、あらためて重要なヒントに気づくことができましたので、以下記載します。
✔︎ヒント1
会社側にとってのヒント。
慣れない論点、トピック事項は、会計/税務面を含めて、必ず事前に専門家に相談して回答を得る!
今回は、土地再評価差額が評価損の方向に計上されていたパターンですが、減損の適用指針に設例もあることから割と典型論点ではあると思います。
ただし、そういうものほど、注意が必要です。分かってると思っていても、実際にきちんと仕訳を切ってみる。書籍に書いてある論点レベルでは自己検証し、事前に監査人に提出し監査を受けておく。これを疎かにできません。監査人側も、相談されれば多忙を極める期末の前倒しとして作業を実施できるメリットがあります。
✔︎ヒント2
監査人側のヒント。
このような論点は、その年度特有の論点という意味で私はトピック論点と呼びますが、会社も監査人も対応に慣れていないことが多く、誤りが発生しやすい状況にある、すなわち監査リスクが高まっているという認識を持つべきです。(これは、監査人だけではなく、経理マンとしても持つべき感覚だと私は考えていますが、それはヒント1により相談という行動で示されます。)
監査リスクの高い領域にはそのぶんだけ時間をかけることになっていますので、今回適切にリスクアプローチされていれば、十分に事前対応はできたのではないでしょうか。
多くの会社と監査チームではこのような事前相談型のリスクアプローチが取られながら実務を動かしていると思いますが、この重要性があらためて本案件で示されていると感じます。つまり、ひとたびこのアプローチが崩れてしまうと、非常に大きな影響が出る可能性があるのです。