日本公認会計士協会は、プレスリリース「十分な期末監査期間の確保について」及び会長声明「十分な期末監査期間の確保について」を公表しました。
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声明内容
今、期末監査がいかに苦しい状況にあるか、また、会計士の自主的な努力による解消の難しさ等について公表されております。
監査側と非監査側双方で、
・人手不足、
・既存制度の深度的な意味での要求水準の増加による工数増加、
・新制度による事前/事後の対応工数の増加、
などなど、監査制度の現場は大変さを増すばかりであるのは周知のとおり。
会計士協会としては、会員である会計士に、現状打破のため監査役等にアプローチすることを要請するとともに、企業側にも理解を求める姿勢を持っているようです。
確かに監査の現場において、事前に手続を完了させるアプローチや、突合のサンプル数を合理的に減らす工夫、クライアントへの資料作製依頼など、考えられる対策はかなり打っている監査チームが多いと思います。どこでもそうだと思います。
それでも、やはり期末監査への手続の集中は厳しく、監査の品質も危ぶまれる状況であるというのは、まあー嘘ではないですね。
一方でいろいろと事件も発生してきた経緯から、会社側の理解も進んできており、監査に協力的な事業会社も増えてきているようにも思います。
そしてどうなる!?
ところでこの企業への要請は、最終的にはどのような形で具体的なアクションに繋がっていくのかなというところが気になりました。
以下箇条書きになりますが、実務的な留意点について記載したいと思います。
✔協力してより効率的に
まずは現状の実務で非効率な部分について洗い出し、企業と監査法人で打ち合わせてスケジュールを決めていくというアクションが取られるのではないでしょうか。
その際に監査法人は、自分らのリソースを踏まえつつ、必要な資料の作成等について正直に企業側に相談・依頼することが重要になるのではないでしょうか。
企業側としても、監査法人が何を欲しているか理解し、出来る範囲で協力していく方向性でアクションがとられると思いますので、監査法人が何をどのようにしたいのか、をまず把握することが大切になるのではと思います。
例えば増減分析(フォーマットの取り決めや分析対象特定ルールを含む)やデータ加工など、監査法人のメンバーがやらなくても企業側で出来る作業については、全体的には監査法人で作業として取り込むのは非効率なことがあります。そういうところは出来る限り企業側で受け入れるのも効率化に繋がると思います。また増減分析のコツや見方についても監査法人と共有すれば、自社のノウハウ強化に繋がると思います。特に本社(に限らないですが)の作業として、「拠点から提出される数値の分析」は色々な意味で大切になってきていると思いますので、財務報告面に限ったものになるかもしれませんが、監査法人のテクニックを「盗む姿勢」は個人的には大切かと思います。
早く監査が終わるほうが時間的・コスト的に企業側にもメリットだと思いますので、どうせ必要になる工数は、早期に企業がやっちゃうのが効率的です。
✔監査のコンプリートに何がどこまで必要か!?
またそもそもとして、「監査法人側で何がどこまで必要なのか」という点をハッキリさせることも大切でしょう。そこが出発点であり最終到達点でもあると思います。「なんとなく不安だから手続をする」という部分があるならば、もはや「監査の失敗」に繋がるリスクすらあります。
独立性や手続実効性等の観点からどこまで起業側に伝えられるかという問題はあるものの、これまで以上に監査手続の必要性・納得感について議論がされるべきかと思います。
✔企業からもアイデアを
あるいは、監査手続の方法や深度等について企業側からアイデアを出すというのも良いと思いますけどね。監査というサービスを自社への牽制手段として使用できる側面があるなら、監査法人だけに任せきるのではなく、これをうまく活用するため、また不要な工数増加を避けるためにも、企業側から積極的にアイデアを出すことも一考かと思います。特に監査経験のある社内会計士にはそのような役割が求められるのかもしれません。
✔報酬の適正化
あと、企業側に重要なのは、「監査に協力して削減できた工数は定量化して、監査報酬の合理的な下げ材料に使う」ことだと思います。そこは事前に監査法人に伝えて(握って)、しっかり定量化できるようにすることが望ましいと思います。がんばった分だけ報われないとモチベーションも高まりませんし、企業側で作業を取り込んでいるのに報酬が減らないのもおかしな話ですから。