コロナウイルスに関する会計・監査など制度対応まとめ

正直、コロナウイルスがここまでの影響を及ぼすとは思っていませんでした。

日本のみならず、世界的に大惨事になっている状況下において、

企業会計・開示・監査の領域でも世界的に非常時対応が余儀なくされています。

コロナはきっかけにすぎず、ここから実体経済への長期的かつ深刻な影響が懸念されている状況でもあります。

20年3月末決算においては、決算遅延や会計上の見積り等の局面で難しい判断が連続すると思います。

いろいろな箇所で情報発信されており、情報をまとめておきたいと思いましたので、以下でご紹介いたします。

開示書類

(金融庁)有価証券報告書等の提出期限

新型コロナウイルス感染症に関連する有価証券報告書等の提出期限について

”やむを得ない理由により期限までに提出できない場合は、財務(支)局長の承認により提出期限を延長することが認められています”

適正な有報の提出が目的なわけですから、期限のほうで柔軟に対応されていると理解しています。

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を踏まえた有価証券報告書等の提出期限の延長について
・企業や監査法人が、決算業務や監査業務のために十分な時間を確保できるよう、金融商品取引法に基づく有価証券報告書等(注)の提出期限について、「企業内容等の開示に関する内閣府令」等を改正し、企業側が個別の申請を行わなくとも、一律に本年9月末まで延長する
・提出期限の確定しない報告書である臨時報告書については、新型コロナウイルス感染症の影響により作成自体が行えない場合には、そのような事情が解消した後、可及的速やかに提出することで、遅滞なく提出したものと取り扱われる

20年4月14日で、企業側が個別の申請を行わなくとも、有報の提出期限を一律9月末に延期することが決定されました。

これは実務担当からすると喜ばしいことではあるのですが、逆に言うと有報監査が9月まで引き延ばせてしまう(9月までの後発事象を検討することが必要になる)ということで、マイナス面についても考慮が必要ではないかと思料します。

(東京証券取引所)

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた適時開示実務上の取扱い

1.決算及び四半期決算の内容の開示
・「事業年度の末日から45日以内」などの時期にとらわれず、確定次第開示する
大幅に決算内容等の確定時期が遅れることが見込まれる場合には、その旨(及び確定時期の見込みがある場合には、その時期)の適時開示

2.事業活動等への影響に関する開示
 役職員や取引先その他の関係者の健康及び安全の確保を最優先したうえで、可能となった時点で、速やかにかつ積極的に、影響等に係る情報開示を行う

3.業績予想に関する開示
業績予想を「未定」とする内容の開示を行い、その後に合理的な見積もりが可能となった時点で、適切にアップデートを行う

例として、コマツは決算発表日付を、4/30予定であったところを、5/18に延長しています。

理由としては、日経新聞によれば、以下があるようです。

  • 世界各国で社員が出社できず、在庫の確認など決算に必要な情報がまとまっていない。
  • 監査法人も在宅勤務となり、会計監査の一部業務に支障が出ている

私の周りで言うと、アメリカなど在外子会社の決算に影響が出ているようです。連結が必要ですから、海外で数字が固まらないと、必然的にスケジュールに影響を与えるものと思います。確かに、無理せず延長する会社は今後出てくるものと思われます。

(税務研究会)

記述情報の開示の充実に向けた取り組み等について~新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえて~

週刊経営財務のWebセミナーを、会員であれば見ることができます。

Q8-2(経営成績等の分析)、Q10-2(キャッシュ・フロー分析)あたりが参考になるかと。

上場廃止・上場審査

(東京証券取引所)

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた対応方針について
1.上場廃止①:債務超過
上場廃止基準における債務超過の改善期間を延長(1年→2年)
(2020年3月期から適用することを想定)2.上場廃止②:「意見不表明」「事業活動の停止」
新型コロナウイルス感染症の影響による場合は対象外

3.上場審査

・「企業の継続性及び収益性等」:新型コロナウイルス感染症の影響が事業計画に適切に反映
されているかどうかを審査(一時的な業績悪化は勘案して審査)
・ 「企業内容等の開示の適正性」:新型コロナウイルス感染症の影響が適切に開示書類(リス
ク情報・業績予想等)に反映されているかどうかを審査
・ 「限定付適正意見」:実地棚卸の立会や事業所の往査が困難な場合における申請直前期の限
定付適正意見を容認(2020年3月期から適用することを想定)
・ 「再審査時の審査料」:新型コロナウイルス感染症の影響で上場承認に至らなかった場合の
再審査料は免除

株主総会

(法務省)

定時株主総会の開催について

1 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて
・定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りる
・会社法は、事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけではない

2 定時株主総会の議決権行使のための基準日に関する定款の定めについて
基準日から3か月以内に定時株主総会を開催できない状況が生じたときは,会社は,新たに議決権行使のための基準日を定め,当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する

3 剰余金の配当の基準日に関する定款の定めについて
特定の日を基準日として剰余金の配当をすることができない状況が生じたときは,定款で定めた剰余金の配当の基準日株主に対する配当はせず,その特定の日と異なる日を剰余金の配当の基準日と定め,当該基準日株主に剰余金の配当をすることができる

決算(発表)の延期ともリンクする話で、議決権行使や配当の別基準日の設定などで、株主総会対応にも追われると想定されます。

また株主としては、これまでどおりの配当基準日で配当を受け取れるとは限らない点に注意が必要かと思います。

Ex.仮に3月期決算の上場会社が今期事業年度終了後3か月以内に定時株主総会を開催できないこととなり、配当金その他の権利の基準日を事業年度末日から変更することとなった場合、3月30日以降変更後の権利付最終日において当該銘柄を保有していない場合は、配当その他の権利が付与されないこととなります(出典:東証HP)。

(経済産業省)

株主総会運営に係るQ&A

Q1.株主総会の招集通知等において、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために出席を控えることを呼びかけることは可能ですか。

Q2.新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、会場に入場できる株主の人数を制限することは可能ですか。

Q3.Q2に関連し、株主総会への出席について事前登録制を採用し、事前登録者を優先的に入場させることは可能ですか。

Q4.発熱や咳などの症状を有する株主に対し、入場を断ることや退場を命じることは可能ですか。

Q5.新型コロナウイルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、株主総会の時間を短縮すること等は可能ですか。

A:全部可能

※ハイブリッド型バーチャル株主総会とは
取締役や株主等が一堂に会する物理的な場所で株主総会(リアル株主総会)を開催する一方で、リアル株主総会の場に在所しない株主がインターネット等の手段を用いて遠隔地から参加/出席することができる株主総会をいう。

税務

(国税庁)

国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ

なお、20年4月13日更新版はこちら

問2.今般の感染症に関しては、これまでの災害時に認められていた理由のほか、例えば、次のような理由により、申告書や決算書類などの国税の申告・納付の手続に必要な書類等の作成が遅れ、その期限までに申告・納付等を行うことが困難な場合には、個別の申請による期限延長(個別延長)が認められることとなります(国税通則法 11 条、国税通則法施行令3条3項、4項)。

〔個人・法人共通〕
① 税務代理等を行う税理士(事務所の職員を含みます。)が感染症に感染したこと
② 納税者や法人の役員、経理責任者などが、現在、外国に滞在しており、ビザが発給されない又はそのおそれがあるなど入出国に制限等があること
③ 次のような事情により、企業や個人事業者、税理士事務所などにおいて通常の業務体制が維持できない状況が生じたこと
経理担当部署の社員が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実がある場合など、当該部署を相当の期間、閉鎖しなければならなくなったこと
➣ 学校の臨時休業の影響や、感染拡大防止のため企業が休暇取得の勧奨を行ったことで、経理担当部署の社員の多くが休暇を取得していること
〔法人〕
④ 感染症の拡大防止のため多数の株主を招集させないよう定時株主総会の開催時期を遅らせるといった緊急措置を講じたこと
〔個人〕
⑤ 納税者や経理担当の(青色)事業専従者が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実があること
⑥ 次のような事情により、納税者が、保健所・医療機関等から外出自粛の要請を受けたこと
➣ 感染症の患者に濃厚接触した疑いがある
➣ 発熱の症状があるなど、感染症に感染した疑いがある
➣ 基礎疾患があるなど、感染症に感染すると重症化するおそれがある

4月以降も順次追加等される見込みとのことです。

会計処理

(企業会計基準委員会)

会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方

*事後的な結果との間に乖離が生じたとしても、「誤謬」にはあたらないものと考えられる

会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方(追補)

*当年度に会計上の見積りを行った結果、当年度の財務諸表の金額に対する影響の重要性が乏しい場合であっても、翌年度の財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある場合には、新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する追加情報の開示を行うことが財務諸表の利用者に有用な情報を与えることになると思われ、開示を行うことが強く望まれる。

いろいろなところで、そんなん無理じゃね?と言われている話です。
確かに、このような仮定を晒すのはリスクがあると思いますし、ある種人知を超えた話だと思います。
ただ、前提として、”仮定が間違ってても良い”と言われているので、ここらが一つの線引きになったのではないでしょうか。
あともう一つ、これは単なる個人的なしょうもないGuessですが、この開示を求める=想定していたよりもコロナの影響が大したことないとASBJが評価しているという側面は無いでしょうか。公表時現在において、死亡者数など、日本は海外に比べて少なめですし。「やれんじゃね?」的なノリを感じる。
言っていることは誤っていないとは思うが、人命リスクを抱えてまで行う作業ではないとは思う。どうせ将来のことなどわからんしな。その批判をぎりぎり回避できる水準で主張してきているなとも感じる。

(DTT)

コロナウイルス感染症2019に関連する会計上の検討事項(日本語あり)

・非金融資産の減損(のれんを含む)
・棚卸資産の評価
・予想信用損失引当金
・公正価値測定
・不利な契約の引当金
・リストラクチャリング計画
・コベナンツ
・継続企業
・流動性リスク管理
・後発事象

IFRSを踏まえた記事ですが、日本基準でも参照すべきところもあります。

(KPMG)

新型コロナウイルスの感染拡大がIFRS適用企業の財務報告に及ぼす影響(英文)
資産の計上額の妥当性
重要な金融商品に及ぼす影響
政府による支援の会計処理
負債の認識の網羅性確保と、適正な表示
従業員給付に及ぼす影響
収益サイクルの会計処理に及ぼす影響
リース契約の変更

(EY)

新型コロナウイルス感染症による影響シリーズ
●会計への影響
コロナウイルス感染拡大におけるIFRS会計上の留意点
• 後発事象
• 継続企業
• 公正価値測定
• 予想信用損失の評価
• 資産の減損
• 財務諸表の開示に関するその他の規定
• その他の会計上の見積り
●働き方への影響
●危機管理、経営戦略への影響
●海外赴任者の税務への影響
●VATコンプライアンス業務への影響
●サプライチェーンへの影響
●政府経済対策への影響
●日米輸出入手続きへの影響
●出入国政策への影響

(個別論点)

減損・見積り
株安による減損、見送り容認 金融庁がコロナで緩和策(※)
※2020/4/2時点で日経新聞の記事に過ぎないため、正確性には要注意
新型コロナウイルス問題を原因とした会計基準の適用問題
税務研究会HPにて、八田先生のコメントです。
コロナは「一過性」とあります。確かにそのようなシナリオも考えられますが、スペイン風邪など過去の疫病の事例に鑑みるに第三派のリスクもあり、この影響の収束時期を見積もることは本当に困難だと思います。

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業決算・監査等への対応に係る連絡協議会」の設置

趣旨:新型コロナウイルス感染症の影響下における、企業の決算作業及び監査等について、 関係者間で現状の認識や対応のあり方を共有するため

リース(IFRS16)
以下、IASBボードにより提案予定
・借手について、Covid-19関連で生じた賃料の減額・支払い猶予等につき、これが
IFRS第16号に規定される「リースの条件変更」に該当するかどうかの評価を行わな
くてよいとする免除規定を導入する。・免除規定の適用を選択した借手はCovid-19関連で生じた賃料の減額・支払い猶予
等を「リースの条件変更」としては扱わない。また当該免除規定を適用している旨
を開示する。・免除規定の適用を選択する借手は、本改訂を遡及的に適用し、その累積的影響
を、改訂を初めて適用した報告期間期首の利益剰余金(もしくはその他適切な資本
の構成要素)に調整する。

公開草案が4月27日(月)に出され、コメント期間は2週間程度の予定。かなりのスピードですね。

まずそもそも、条件変更の処理がかなり面倒です。そのため、賃料の免除が相当程度発生する場合は、事務処理がかなり面倒になります。そのため免除規定を置くのだと思いますが、最後の利益剰余金の調整は手間がかかるから微妙だな・・・(今後の話が中心なのかもしれないけど)。

監査

非常時だからこそ、会計監査は適切に実行されるべきかと思います。

一方で監査範囲の制約や現場管理の難しさがありますので、この困難を乗り切るための指針として情報発信がされています。

(JICPA)

「新型コロナウイルス感染症に関連する 監査上の留意事項(その1)」

1.監査手続に係る留意事項

(1) 実地棚卸の立会

(2) 残高確認

(3) 監査証拠の信頼性

(4) グループ監査

2.既に決算日を迎えた企業の監査対応

3.内部統制監査

この混乱下において一定の指針にはなると思いますが、最終的に監査人が重要な判断を下さなければならない点に変わりはなく、クライアントと密接にコニュニケーションを取ることが必要だと思います。クライアント側からも、監査人に対して十分な連携が必要なのだと思います。
緊急事態宣言を受け、監査の品質を確保するために、一律に決算を延期する可能性が出てきました(4/7現在)。

「新型コロナウイルス感染症に関連する 監査上の留意事項(その2)」

1.不確実性の高い環境下における監査の基本的な考え方
・・・将来の帰結が予測し得ない事象又は状況について、財務諸表に与える当該事象又は状況の影響が複合的かつ多岐にわたる場合の意見不表明等の判断は、相当慎重になされるべき

2.会計上の見積りの監査
・・・特に将来キャッシュ・フローの予測を行うことが極めて困難
(1) 適用される財務報告の枠組みの理解
※「財務諸表作成時に入手可能な情報」に関して、2020年4月10日に、企業会計基準委員会から、議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」が公表
(2) 会計上の見積りの合理性の検討
① 新型コロナウイルス感染症の影響の見積り
② 会計上の見積りに用いられた情報の検討
・・・悲観的でもなく、楽観的でもない仮定に基づく企業固有の事情を反映した説明可能な仮定になっていることを検討
(参考情報)2020年3月31日時点における会計上の見積りに影響を及ぼす事象に関する情報あり
③ 不確実性に関する感応度分析
④ 強調事項による説明

3.継続企業の前提

その2は会計上の見積にフォーカスした内容になっています。
世界レベルで前例のない状況であるため、将来の予測が極めて困難であり、それが合っているか間違っているかという判断を突き詰めるのはもはや人間業ではないため、妥当な指摘だと思います。
個人的な意見ですが、感染自体がいつまで長引くか(期間)の一つの指針・前例としては、スペイン風邪(東京都健康安全研究センター)が参考になると思っています。
流行には第2派、第3派というものがあり、今回も同様の可能性はあります。そのため悲観的には2年~3年程度の見積りとなるのではないでしょうか。ただ、当時に比べてアビガンなど特効薬の成果が期待できる等の前提相違があることから、楽観的には1年内の収束を見込めるのではないでしょうか。
これに、業種の違いや政府時補助金など個別の事情を勘案して見積るとすれば、数字を出すだけでかなり時間はかかりそうだし、会社によってそれなりに前提の違いは出てきますよね。
なお経済的には、悲観的な世界的リセッション突入論と、楽観的なV字回復論が交錯していますが、仮に見積りと異なっても誤謬ではないわけですから、中間を見据える(期待値もあり)のも1手かと。ただ、数字によって減損損失が変わるので、監査人を含め批判的に数字を見ざるを得ない人は、そこに企業の意思が入ってくる可能性は見逃せないと思います。
その3は、スケジュールに関してのもので、わかりやすくサマリーされています。
2021年3月期の第1四半期についても、延長後の期限は同じ2020年9月末ということで記載されております。
また、会社法計算書類については、①株主総会自体を延期する場合、②総会自体は延期せず計算書類を継続会で報告する場合の2パターンに分けて整理記載されています。
その4では、例えば以下は「特別損失」でOKということでした(理由は、”臨時性”)
  1. 営業停止期間中に発生した固定費
  2. イベントの開催の準備及び中止のために直接要した費用
  3. 政府要請や声明等により、被監査企業の工場が操業を停止又は縮小したときの異常な操業度の低下による原価への影響
その5は、「除外事項付意見(監査範囲の制約)」と、「経営者確認書」です。
これを機に、それぞれどういったものかをおさらい出来る内容になっています。
結構わかりやすいですね。
新型コロナが前例のないような規模で人類に危機を及ぼしても監査人の責任が変わるわけではないので、制度上どうしても対応せざるを得ない箇所かと思います。

(西村あさひ法律事務所)

大手法律事務所による、会計上の見積りに関するリーガル面からのアドバイス(&受注活動)。
「最善の見積り」は、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づいて、合理的に金額を算出することを要するものであることに照らせば、事後的な検証プロセスについて敢えて段階を分けると、①財務諸表作成時にいかなる情報を入手していたか(入手可能であったか)、②入手した情報に基づき個々の事実についてどのような事実認定を行ったか(例えば貸倒引当金を例にとれば、債務者の経営状態や将来の事業計画等の引当金計上にあたっての会計判断の前提となる事実について、どのような事実認定を行ったか)、そして、③個々の事実を踏まえてどのように見積金額を算出したか、の 3 段階が問題となると思われる
③については純粋な会計判断としての側面が強い一方で、①や②については、どのような情報を収集したのかや、収集した事実の総合的な判断といった、法的な観点から通常行われている判断の側面を含んでいると思われる
他方で、「財務諸表作成時に入手可能」であったか否か(上記 2.①)については、事後的な検証において、財務諸表作成時よりも通常は多くの情報が入手可能になっていることが想定され 、合理的に十分な情報入手がなされていたか否かが問題となることが想定される。
また、上記 2.②の入手した情報に基づく事実認定については、そもそもの事実認定に誤りがないか、特に経営判断等に属するような事項については一定の裁量・幅が認められ得るとしても、偏った事実に基づき判断するなど、不合理な認定が行われていないかが問題となることが想定される
Covid19に関して言えば、①②の収集も極めて難しい面があると思います。①に関しては意図するしないにかかわらず、結果的に正しくない情報が流布されていた側面もあったと思います。5月下旬の今現在も事態は困難を極めており、情報を疑い出したらキリがなく、この点を事後的に突き詰め過ぎるというのはある意味人道に反する気さえしますが・・・。
ただ、個人的に②については注意が必要だと思っています。この短期間の騒動と限定的な情報を受けて固定資産の減損に踏み切った会社があったとして、状況にもよるでしょうが、「これを機に都合よく数字を作る」リスクはどうしても残ってしまい、それって本当にCovidが原因なのか(ずっと前から減損すべきではなかったか)という目線で見られてしまうことはあるかもしれません。

その他

経済産業省

厚生労働省