米国会計基準(USGAAP)を採用する日本企業、または米国に上場している日本企業一覧

米国会計基準(USGAAP)を採用する日本企業、または米国に上場している日本企業一覧

久しぶりの更新になります。

哲です。

 

IFRSを採用する国内上場企業については、証券取引所がこちらで注意してモニターしていますので、いつでも一覧を入手できます。

一方で、以下のような会社については誰かが集計をしなければなりません。

  • 米国会計基準を採用して日本に上場している日本企業
  • 米国会計基準を使用していたがIFRSに移行して日本で上場している日本企業
  • IFRSを利用して米国に上場している日本企業

そこで今回は、これらの会社にフォーカスをあてて記事にしてみたいと思います。

日本企業が日本で上場する際に適用する会計基準

4つの会計基準

まず、日本企業が日本で上場する場合に認められている会計基準について確認します。

結論から言って、次の4つです。

  1. 日本基準
  2. 指定国際会計基準(IFRS)
  3. 修正国際基準(JMIS:JAPAN’SMODIFIEDINTERNATIONALSTANDARDS)
  4. 米国会計基準(USGAAP)

参照:連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則 第7章

ただし、③のJMISについては適用している会社は(今後も)無いでしょうから、日本基準、IFRS、米国会計基準の3つが主な選択肢になります。

参考資料

以下は、参照条文等です。

IFRS

連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
(指定国際会計基準に係る特例)
第93条 指定国際会計基準特定会社が提出する連結財務諸表の用語、様式及び作成方法は、指定国際会計基準(国際会計基準(国際的に共通した企業会計の基準として使用されることを目的とした企業会計の基準についての調査研究及び作成を業として行う団体であつて第1条第3項各号に掲げる要件の全てを満たすものが作成及び公表を行つた企業会計の基準のうち、金融庁長官が定めるものをいう。次条及び第94条において同じ。)のうち、公正かつ適正な手続の下に作成及び公表が行われたものと認められ、公正妥当な企業会計の基準として認められることが見込まれるものとして金融庁長官が定めるものに限る。次条において同じ。)に従うことができる。

JMIS

連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則
(修正国際基準に係る特例)
第94条 修正国際基準特定会社が提出する連結財務諸表の用語、様式及び作成方法は、修正国際基準(特定団体において国際会計基準を修正することにより作成及び公表を行つた企業会計の基準のうち、公正かつ適正な手続の下に作成及び公表が行われたものと認められ、公正妥当な企業会計の基準として認められることが見込まれるものとして金融庁長官が定めるものに限る。次条において同じ。)に従うことができる。

米国会計基準

米国会計基準については、以下の通り、(ア)SEC登録企業で米基準を使用している企業、(イ)SEC未登録だがかなり前から米国基準を使用している企業の2パターンで使用が認められています。

「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」の公表について

1.主な改正の内容

(1)連結財務諸表規則の改正

  • ア.米国証券取引委員会(以下「SEC」という。)に米国式連結財務諸表を登録している日本企業が、金融商品取引法上の連結財務諸表の作成基準として、米国基準を使用できる規定について、平成28年3月31日までとする使用期限を撤廃することとします。

    また、新規にSECに米国式連結財務諸表を登録した日本企業は、改正府令の公布・施行の日以後、金融商品取引法上の連結財務諸表の作成基準として、米国基準を使用できることとします。

    上記を踏まえ、連結財務諸表規則に第8章を新設するとともに、連結財務諸表規則等の一部を改正する内閣府令(平成21年内閣府令第73号)附則第2条第3項を削除します。

  • イ.SECに米国式連結財務諸表を登録していない日本企業のうち、連結財務諸表制度の導入(昭和52年)前から米国基準を使用している日本企業が、金融商品取引法上の連結財務諸表の作成基準として、米国基準を使用できる規定について、平成28年3月31日までとする期限を撤廃し、当分の間、米国基準を使用できることとします。

    上記を踏まえ、連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令(平成14年内閣府令第11号)附則第3項を改正します。

なお、本改正は、平成21年12月11日に公布された改正連結財務諸表規則(平成21年内閣府令第73号)における米国基準の使用に係る規定について、改正前の状況に戻すものです。

つまり、日本企業が日本で米基準を新規に使用して上場するためには、SECに上場する必要があることになりますね。

これはハードルが高い。

第95条 米国預託証券の発行等に関して要請されている用語、様式及び作成方法により作成した連結財務諸表(以下「米国式連結財務諸表」という。)を米国証券取引委員会に登録している連結財務諸表提出会社が当該米国式連結財務諸表を法の規定による連結財務諸表として提出することを、金融庁長官が公益又は投資者保護に欠けることがないものとして認める場合には、当該会社の提出する連結財務諸表の用語、様式及び作成方法は、金融庁長官が必要と認めて指示した事項を除き、米国預託証券の発行等に関して要請されている用語、様式及び作成方法によることができる。

第96条 前条の規定は、米国式連結財務諸表を米国証券取引委員会に登録しなくなつた場合には、適用がないものとする。

日本企業がアメリカで上場する際に適用する会計基準

日本企業は通常、日本の証券市場に上場しますが、一部の企業はアメリカにも上場しています。

さらにごく一部の日本企業は、アメリカにのみ上場しています。

その場合に選択される会計基準は、以下の2つです。

  1. 米国会計基準(USGAAP)
  2. 国際会計基準(IFRS)

米国市場も、日本と同様に、外国企業(FPI: Foreign Private Issuer)が上場する場合はIFRSをそのまま利用することを認めています。

Financial Reporting Manual TOPIC 6 – Foreign Private Issuers & Foreign Businesses
6300IFRS
(Last updated: 9/30/2008) *翻訳は機械翻訳ベースの参考情報

6310
Acceptance of IFRS as Issued by the IASB without Reconciliation to U.S. GAAP
米国GAAPとの調整を伴わない、IASBが発行したIFRSの受け入れについて
6310.1
A foreign private issuer that files using IFRS as issued by the IASB is not required to reconcile to U.S. GAAP. [Release No. 33-8879]
IASBが公表したIFRSを用いるFPIは、U.S. GAAPとの調整を行う必要はありません。

6310.2
Eligibility to omit reconciliation: The accounting policy footnote must state compliance with IFRS as issued by the IASB and the auditor’s report must opine on compliance with IFRS as issued by the IASB. The foreign private issuer may state, and the auditor may opine on, compliance with both IFRS as issued by the IASB and home-country accounting standards (e.g., IFRS as endorsed in the EU) if there is no difference. [Item 17c of Form 20-F]
会計方針の脚注には、IASBが公表したIFRSへの準拠を記載し、監査報告書には、IASBが公表したIFRSへの準拠について意見を述べなければならない。FPIは、IASBが発行したIFRSと自国の会計基準(例:EUで承認されたIFRS)の両方を遵守していることに差異がない場合、その旨を記載し、監査人が意見を述べることができる。

6310.3
Foreign private issuers that comply with another basis of reporting (e.g., home- country GAAP) are not eligible to omit the U.S. GAAP reconciliation. In addition, foreign issuers that are not foreign private issuers or domestic subsidiary issuers of foreign companies must continue to provide the U.S. GAAP reconciliation.
他の報告基準(例:自国のGAAP)に準拠しているFPIは、U.S. GAAP調整表を省略することはできません。

日本企業は、米国市場から見れば外国企業ですから、FPIの要件さえ満たせば、基本的にはIFRSを携えて(USGAAPとの差異を注記することなく)上場することができます。

例えば日本でIFRSを適用している会社であれば、ざっくりいえば、日本語の開示を英訳することで米国に上場できるわけです(相当ざっくりしたイメージですが)。

USGAAPを採用しているか、もしくはIFRSを採用して米国上場している日本企業のリスト

以下では、日本企業で以下の要件のいずれかを満たす企業についてまとめていきます。

  1. 米国会計基準(USGAAP)を採用している(米国上場は問わない)
  2. IFRSを採用し、米国に上場している

*可能な限り網羅的に集計しますが、漏れがないことは保証できない点、ご了承ください。

調査基準日:2022年1月

会社名 会計基準 米国上場
野村ホールディングス㈱ US NYSE
オムロン㈱ US
㈱ワコールホールディングス US
オリックス㈱ US NYSE
㈱村田製作所 US
富士フイルムホールディングス㈱ US
ソニーグループ㈱ IFRS (2021年度~) NYSE
㈱小松製作所 US
TDK㈱ US
㈱東芝 US
キヤノン㈱ US NYSE
(株)三菱UFJフィナンシャル・グループ US NYSE
(株)三井住友フィナンシャルグループ IFRS
(株)みずほフィナンシャルグループ US NYSE
株式会社メディロム US NASDAQ (2020年~)
吉通貿易 US NASDAQ (2021年~)
武田薬品工業 IFRS NYSE (2018年~)
トヨタ自動車株式会社 IFRS(2020年度~) NYSE
本田技研工業 IFRS NYSE

おわりに

いかがでしたでしょうか。

米国会計基準を適用する日本企業は年々減少していますが、一方で米国会計基準を携えて米国に直接上場する日本企業も出てきています。

IFRSも米基準も難解ですが、今日の日本基準の礎となっている基準でもありますので、それぞれ機会があるときに学習する意義はあります。

さらに、米国上場を目指す会社様であれば、ぜひ上記の会社の事例を確認いただければと思います。