会計士、向いてない? ①

  • 2017年7月22日
  • 2019年1月21日
  • 健康

私が公認会計士になって10年ほどが過ぎました。

この10年、いろいろなことが、それなりにありました。

その中で、特に仕事がつらいとき、「ひょっとして、自分は会計士に向いていないんじゃないか!?」と思う日もありました。

酷い場合、「ひょっとして、自分は働くこと自体向いていないんじゃないか!?」と半分冗談で思ったこともあります。

本シリーズでは、もし同じように思い悩んでしまった人がいたらと思い、そんなときどう考えたら良いか、私の考えを記載します。

1.なぜ向いていないと思ってしまうか

原因は人それぞれだと思いますが、私の場合は、主に以下のケースで悩みました。

ケース①:会計自体がすごく難しいものに思われ、会計を生業として生きることが果たしてできるのかと不安になった

ケース②:クライアントの要求水準が高く、自分の能力では追いつかない中で、次第に当たりもきつくなり、顧客の満足するサービス提供ができるのか不安になった

ケース③:上司の能力が異様に高く、要求水準に応えることができず、今後が不安になった

総じて、監査法人入社5年目くらいまでの若い時期に上記をよく感じた記憶があります。

2.ケース① 会計が難しいと感じるとき

会計が難しいか簡単かについては、たとえ公認会計士とあっても、人によって分かれるところです。

また、人によってそのように感じる理由も違うと思います。

私の場合(今)は、会計は難しいと思うときもありますし、簡単だ(論理整然としていて割とシンプルだ)と思うこともあります。

難しすぎて、自分には向いていないのかなーと悩んだのは、例えば以下のような時(若いとき)でした。

✓ 上司やクライアントと議論をしている中で、自分の持っている知識や経験以上のものを相手が持っていて、話の内容がよく理解出来なくなってしまい、とてもではないが仕事をきちんとこなせているとはいえない状況になってしまった

✓ 論点をもとに基準等をもとに調べるのだけども、結果導いた結論について、全く異なる結論をパートナー等が下し、力の差に歴然としてしまった。にもかかわらず、年次の少ししか違わない先輩は良く理解されていた。

受験時代の知識にはそれなりに自信があったのですが、実務上の論点を検討するというのは非常に難しいものだと思ったものです。

要は、会社の業界が特殊であったり、論点が特殊であったりする場合においては、会計基準等に明確に結論が記載されておらず、会計のロジックを用いて納得できる結論を組み立てて、クライアントに提示しなければならないのですが、その難易度にも幅があります。

自分にとって極めて難しい、あるいはこなせなかったと思う場合があったときに、不安が出てくるのだと思います。場合によっては自信を失ってしまうということです。

このようなケースというのは、監査法人で頑張っている会計士であれば誰でも直面することだと思います。

3.ケース①の考え方

では、どのように考えたら良いか?

私なりの考えを記載します。(主に若手の方向けに記載します)

■まず、結果に対して「あまり気にしない」ということです。

そして、変に自分が今後もダメじゃないかと思ってしまうのは、それ自体何も生まないし、勿体ないことだと思います。

それよりも、がむしゃらに、あるいは冷静に原因を分析し、「次は同じような誤りをしないぞ!」と決めることが大切です。

PDCAサイクルというのを聞いたことがあると思いますが、それと同じです。自分の見解を整理してアウトプットし(P、D)、その結果に対して他の意見・見解をぶつけ(C)、課題があれば次に活かす(A)というサイクルを、数多くこなしていけば実力はついていきます。

人によってペースが違うかもしれませんが、気にしてもしょうがないです。必要以上に気にすることからは何も生まれません。

よくまわりを見れば、専門的な分野においては、見解が相違するというのは普通のことだということに気付くと思います。

基準等に書いていない論点については、誰もが身構えてしっかり考えないとあるべき結論は出せません。誰もが不安なのです。パートナー間、あるいはパートナーとマネジャー以下で見解が相違することも大いに起こりえるのです。監査法人であれば、自信がない論点であれば専門部署に問い合わせることも多いのです。そうやってみんなが知見を集めながら論点をこなしていますので、自分だけで何でも解決しようとせず、誰かに相談することも大切なのです。視野を広げましょう!

大切なのは、「自分がパートナーや責任者になったときに、(誰かと協力しながらでも)論理的な、納得できる結論が下せるか」ですので、現状が、将来がどうだこうだと不安になる必要はありません。

専門業務はそういうものだと、誰もが苦労するのだと、そこは割り切って、むしろ目の前の論点について吸収していく姿勢が何より大事だと思います。

このような割り切り+前向きなPDCAを本気で重ねていけば、難しい業務であってもきちんとこなせるようになっていくのではないでしょうか。

■もっとも、会計士は「会計の難しいorマニアックな論点を捌くこと」だけが仕事ではありません。

他にも活躍できる分野はたくさんあるので、是非、視野を広く持って、変に自分の可能性を変に狭く解釈しないで、少しでも世に貢献できるよう業務に取りかかって欲しいと思います。

例えばプロジェクトマネジメント能力、クライアントへの営業力、エクセル技術で効率的な決算資料を作成する能力・・・など、会計士を推し量るパラメータは多岐にわたりますので、仮にある分野で向いていない、やりたくない、と思えば、別の分野に注力して活躍すればよいのです。

会計士のキャリア自体をネガティブに解釈する必要はどこにもありません。

■自分が難しい試験を突破したことを思い出していただいて、是非自信をもってください。

なんだかんだで、実務でも受験時代のように日々努力を積み重ねることが大切だと思います。

長くなりましたので、次回以降、ケース②と③について記載します。