顧客関連資産(無形資産)の基準差異やいかに

  • 2019年5月23日
  • 2019年5月23日
  • IFRS

今回は、M&Aで取得される顧客関連資産(無形資産)のうち、”分離して譲渡可能な無形資産”の解釈について、日本基準とIFRSの差異の観点で考えてみます。

顧客関連資産は、日本基準でもIFRSでも償却することが多いのですが、のれんについては償却するしないの明確な基準差異がありますので、

IFRSの場合、顧客関連資産とのれんをどのように、どれくらいで計上するか、あるいは顧客関連資産を計上しなくてよいのかという論点は、非常に重要です。

まずこの無形資産についての説明ですが、日本基準では以下のような記載になっています。

企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針

59. 企業結合会計基準第29項にいう「分離して譲渡可能な無形資産」とは、受け入れた資産を譲渡する意思が取得企業にあるか否かにかかわらず、企業又は事業と独立して売買可能なものをいい、そのためには、当該無形資産の独立した価格を合理的に算定できなければならない(第367項参照)。

59-2. 特定の無形資産に着目して企業結合が行われた場合など、企業結合の目的の1つが特定の無形資産の受入れであり、その無形資産の金額が重要になると見込まれる場合には、当該無形資産は分離して譲渡可能なものとして取り扱う。したがって、このような場合には、企業結合会計基準第28項及び第29項により、当該無形資産を識別可能資産として、取得原価を配分することとなる(第367-2項参照)。

367-2. 企業結合の目的の1つが、特定の無形資産の受入れにあり、その無形資産の金額が重要になると見込まれる場合には、取得企業は、利用可能な独自の情報や前提等を基礎に一定の見積方法(第53項参照)を利用し、あるいは外部の専門家も関与するなどして、通常、取締役会その他の会社の意思決定機関において、当該無形資産の評価額に関する多面的かつ合理的な検討を行い、それに基づいて企業結合が行われたと考えられる。このような場合には、当該無形資産については、識別して資産計上することが適当と考えられ、分離して譲渡可能なものとして取り扱うこととした(第59-2項参照)。

 

一方でIFRSでは、IAS38にて、無形資産は以下のいずれかの要件を満たすものとされています。

①分離可能であること

②契約またはその他の法的権利に起因するものであること

M&Aの顧客関連資産としては、①は対象会社から切り離して売却などができる状態をいいます。

②は読んで字のごとくで、当該権利が譲渡可能なのかどうか、企業又は他の権利及び義務から分離可能なのかどうかは問われません。

そのため、定義から考えてもIFRSの方が日本基準よりも無形資産の範囲が広いのではないかと言われることがあります。

専門書では基準差異が存在する可能性があると、よく述べられています。

確かにここは解釈として、大きく2つあるようです。

1つは範囲に明確な差異があるというもの。

もう1つは、基準差は無く同じだというもの。

実務の世界ではどちらが一般的なのかということですが、

これはどうも、後者のほうが一般的のようです。

よって、日本基準でもIFRSでも差異が無いと考えてM&Aの会計処理を行うことは、それほど珍しいことではないのだと思われます。

というか、IFRSにあわせて日本基準も会計処理をしてくださいと、監査人から言われることもあります。

日本基準には書いてないだけなので、明確に基準差異があるとは言いにくいのだと思います。

一般論をおさえたうえで、外部専門家も巻き込んで会計処理を慎重に検討していく必要があると思われます。