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監査法人の思考回路を追う回
経営財務3409号にて、監査法人対応に関してなかなか突っ込んだ記事(収益認識基準 導入の道しるべ 第3回 監査法人のトリセツ~ポイントは「思考回路」と「相談のタイミング」)が記載されていました。
もともとは収益認識基準の対応について連載されていたものですが、
監査上の承認を得るためには、まず敵を知るべしと言う趣旨で、いきなり監査法人に関して色々なことが書かれています。
監査法人を取り巻く環境
この図を引用させてください。
業界人ならわかるのですが、圧倒的に監査人心理を描写できています。
なぜ監査法人がお客様と十分な会話時間を取れなくなっているのか、なぜワークライフバランスが崩壊しがちなのか、についての大きなヒントがここにあります。
個人的な見解を申し上げますと、最近はこれら4つの厳しさがすべて「鬼」レベルです(レビュー側の担当者にもよるので、強弱の感じ方は人によると思われるが)。
とはいえ、これを経ないと仕事(監査)をしたことにならないですし、本来の監査法人の機能のチェックという目的から考えるとこれらの多重チェックは合理的です。
ビジネスもそうですが、監査も難しい仕事ですね。
他社事例
個人的に思った点として、やはり他社事例は有効ではないかということです。
大手の監査法人の優秀な会計士であれば、むしろ他社事例を嫌うところがあります。
あくまで他社は他社であって、専門的判断は会社を理解し尽くした会計士によってしかなされない、という理屈です。
個人的にはこれは正しいと思います。そして他社事例に引っ張られすぎるのも色々な意味で危険です。
でも、他社事例(特に同業)によって得られる客観的な事実というものもあるわけで、
大いに参考にしていけばいいのではと思います。
他社事例とは少し離れますが、更に追加でコメントするとすれば、監査法人側としても手続を減らせるところは積極的に削るべきでしょうね。
これは会社の考えた適当な処理を安易に容認しろという意味ではありません。
無意味に厳しい処理を会社に要求するのではなく、
頭を使って物事を解決するということです。
無駄に複雑な処理を要求すると、それだけで会社のみならず監査でも多くの工数を割くことになりますので、
会計基準が求めるレベル感を十分に理解して、あるいは品質管理部署の見解などのリソースもフルに活用して、
「会計的に十分に合理的と認められる処理を、短時間で実現」できるようにアドバイスすることです。
決めたあとで随分と効率化されるので、これは意識しておきたいところです。
Big4とそれ以外の概念
そして更に突っ込んでるな~と思ったのが、以下。
いわゆるBIG4と呼ばれる監査法人か,それに準ずる規模の監査法人が担当している会社の決算書と,それ以外の監査法人が監査報告書をつけている決算書では,監査法人が首を縦に振る威力に差があるのが実情です。
これは業界敵には大きな声で言えないという意味でタブーだが、確かによくある話。
他社事例をよく調べるのは開示事例だったりするわけですが、その時に特に意識しますね。
というか大手の監査法人では自然と(黙示的に)そういう教育を受けてますね。
このブログでも、事例を分析するときは、一応意識はしている(情報提供する側としては、せざるを得ない)状態です。
なお断っておきますが、中小の監査法人でも優秀な方は多くいらっしゃいます。