のれんの一時償却という鬼畜制度

  • 2019年11月6日
  • 2020年3月1日
  • 会計

 

こんにちは。アカウンティングファイターです。

今回はのれんの一時償却についてご紹介します。

日本基準ではのれんを償却するというのは有名な話で、

日本基準を特徴づける会計処理になっています。

のれんの償却というと、毎期毎期定額法で費用に落ちていく会計処理が基本ですが、

一部の状況下においては、一時償却という会計処理が起こります。

具体的に基準の文言を引用すると以下の通りです。

連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針(会計制度委員会報告第7号)

32. 子会社ごとののれんの純借方残高(連結原則に基づいて会計処理している場合には、借方残高(のれん)と貸方残高(負ののれん)との相殺後)について、親会社の個別財務諸表上、子会社株式の簿価を減損処理(金融商品会計実務指針第91項、第92項及び第283−2項から第285項に従う処理をいう。)したことにより、減損処理後の簿価が連結上の子会社の資本の親会社持分額とのれん未償却額(借方)との合計額を下回った場合には、株式取得時に見込まれた超過収益力等の減少を反映するために、子会社株式の減損処理後の簿価と、連結上の子会社の資本の親会社持分額とのれん未償却額(借方)との合計額との差額のうち、のれん未償却額(借方)に達するまでの金額についてのれん純借方残高から控除し、連結損益計算書にのれん償却額として計上しなければならない。

さらっと書いていますが、

これが非常に鬼畜なルールとなっており、おそらく多くの会社を困らせています。

どういうことかというと、日本基準において、子会社株式を減損処理する場合、

子会社単体の簿価純資産の金額まで価値を切り下げることがあります(外部から取得した企業であっても)。

たとえ子会社の企業価値評価を行っていたとしても、です。

この場合、上記32項によれば、たとえば①子会社の企業価値>②子会社単体の実質価額(簿価純資産+評価損益等)の状態となっている場合、

①ではなく②の水準まで子会社株式の簿価を落とす(減損とは別に、のれんの”一時償却”という考え方でもって)ことになります。

これが鬼畜です。

資産の定義からすると、②ではなく①のほうが実態を表現しているようにも解釈できるのですが、

日本基準は基本的に②を採ります。

その結果、超過収益力がいくらか残存していたとしても、簿価純資産までの金額を減損する可能性があります。

保守的すぎるともいえますが、実際に多くの会社でのれんの一時償却による特別損失を計上している現実があります。

ただし、この点、上記32項はさすがにやり過ぎだと思われてか、

こちらを削除する改正が検討されているようです。

ということで、

改正されるまでの間は、子会社株式を単体で減損する場合で、のれんを抱えている場合は、注意が必要になります。

検討漏れの無いようにしていく必要がありますね。