建設仮勘定について理解をすすめるための8つのポイント

建設仮勘定について理解をすすめるための8つのポイント

こんにちは。公認会計士のファイターです。

今回は、建設仮勘定について解説します。

多くの企業で登場する勘定科目ですが、有形固定資産でありながら、他の償却性資産とは明確に特徴を異にするということで、多くの論点があります。

初見の方にも使っていただけるように、できるだけ多くの解説を盛り込みたいと思います。

1.定義(建設仮勘定とは?)

定義

フォーマルな定義*

建設仮勘定とは、有形固定資産建物及び暖房、照明、通風等の付属設備、構築物、機械及び装置、船舶及び水上運搬具、鉄道車両、自動車その他の陸上運搬具、工具、器具及び備品、土地)で営業の用に供するものを建設した場合における支出及び当該建設の目的のために充当した材料をいう。

*財務諸表等規則22条と、財務諸表等規則ガイドライン22-9を参考に筆者作成

カジュアルな定義

建設仮勘定とは、有形固定資産建設・製造に要した中間手付金や部分納品に対する支払(予定)額をいう。

参考:ソフトウェア仮勘定(無形資産)との関係

建設仮勘定に似た勘定科目として、「ソフトウェア仮勘定」があります。

これは、平たく言うならば建設仮勘定の無形資産バージョンです。

ソフトウェアを構築する場合でも、未完成・未納品の対価を負担することがありますので、その支払(予定)額を計上するための科目です。

2.英語名

建設仮勘定は、「Construction In Progress (CIP)」と表現されることが多いです。

タクソノミ2020でも、そのような表記になっていました。

実際実務でも、”シーアイピー”と呼んだりします。

3.特徴

減価償却しない

建設仮勘定は有形固定資産として計上されますが、大きな特徴としては減価償却をしない点にあります。

理由はシンプルです。

「まだ使っていないから(専門用語でいうと、”事業の用に供していない”から)」です。

完成までの期間がそう長期でなければ、使わなければ価値が減らないと考えているためですね。

この点、参照しておきたいのが法人税法基本通達です。

7-1-4  建設中の資産
建設中の建物、機械及び装置等の資産は減価償却資産に該当しないのであるが、建設仮勘定として表示されている場合であっても、その完成した部分が事業の用に供されているときは、その部分は減価償却資産に該当するものとする。

減価償却するかどうかについては、”事業に供しているかどうか”というのが、会計でも税務でもキーとなる概念になります。

ただし、会計では減価償却とは別に、「減損」には留意しなければなりません。それは後述します。

建設中・製造中の有形固定資産としての性質

建設仮勘定という資産内容のイメージとしては、”工事中/製造中の物件”であると理解しておきましょう。

建設工事などは工期が1年を超えるなど長期にわたることも珍しくないため、建設中に発注元が決算を迎えてしまうことがあります。

このような場合、決算時において「建設中の資産」をあらわす勘定科目として、建設仮勘定が使用されていると理解できます。

手付金としての性質(前渡金の固定資産バージョン)

工事が完成していなくても発注者がお金を支払うことがあります。

発注先であるゼネコン等は、工期中に全く資金が入ってこないのでは資金繰りが厳しくなってしまいますから、中間金・手付金として発注元に支払をお願いすることがあるためです。

このように、基本的に建設仮勘定の支払額の意味は”中間金・手付金”です。

財務諸表等規則ガイドライン22-9にて以下のように記載されていることからも、建設仮勘定の性質として、「前渡金」が想定されていると理解できます。

5 建設仮勘定に属するものは、規則第23条第2項の規定により、建設仮勘定の名称を用いないで、建設前渡金、その他の名称を付した科目をもって掲記することができるものとする。

4.仕訳・会計処理

ここからは、仕訳をどう切っていくのかについて、時点毎にポイント解説します。

当初認識(カットオフ)

手付金支払時

建設仮勘定の内容が、「中間金・手付金」の場合、キャッシュの支払い時に、以下のような仕訳を切るのが一般的です。

(借) 建設仮勘定 ××× (貸) 現金預金 ×××

手付金の支払いが起こるたびに、金額が累積していきます。

部分納品時

手付金ではなく、”部分的に引渡しを受けた工事代金や経費(設計料,資材購入費等)”がある場合も、建設仮勘定が計上されることがあります。

(借) 建設仮勘定 ××× (貸) 現金預金/未払金等 ×××

この場合、通常カットオフは納品時になり、納品時に請求書等に基づき建設仮勘定を計上すると考えられます。前提として、納品完了し、支払義務を負っている事実を突き止める必要があります。

この場合の注意点は、発注先の業者からの請求書が届かず、確定金額の算定が難しいケースです(請求書が無く、納品時~決算時において支払確定額もわからないという前提です)。

業者や案件によっては、納品後すぐの段階では請求書を出してくれない(出せない)場合も考えられます。

そうはいっても、納品はしてしまっているわけですから、金額を何かを根拠に算定する必要があります。

見積書で代替する場合もあるかもしれませんが、業者に請求書の作成を急いでもらう必要があります

なぜなら金額が確定的かどうかは、貸方の負債科目に影響する可能性があるからです。

実務上、確定金額であれば「未払金」、未確定要素のある金額であれば「未払費用」で処理することが多いように思います。

本勘定振替時

工事中の物件が完成したら、本勘定へ振替えます。

仕訳としては、以下の形になります。

(借) 有形固定資産勘定(建物等) ××× (貸) 建設仮勘定 ×××

借方残高で残っていた建設仮勘定を取り崩して、本勘定へ振替えます。

実際は、この後減価償却費が走っていきますが、本勘定に振替えた時点で、建設仮勘定は消滅していますので、減価償却費の説明は割愛します。

5.減損会計

その他、建設仮勘定につき会計的に注意を要する点についてご説明します。

建設仮勘定は、減損会計の対象となります。

減損の兆候

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針において、減損の兆候の一つ(使用範囲又は方法について回収可能価額を著しく低下させる変化がある場合)として、以下の記載があります。

13.資産又は資産グループが使用されている範囲又は方法について、例えば、以下のような当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化が生じたか、又は、生ずる見込みである場合には、減損の兆候となる(減損会計基準 二 1.②及び注解(注2)参照)。

⑺ 建設仮勘定に係る建設について、計画の中止又は大幅な延期が決定されたことや当初の計画に比べ著しく滞っていること。

通常、ゼネコンは工事を請け負っているわけですから、責任をもって完成させる義務があります。

その工事が中止になったり、大幅に延期するような計画修正をするというのは、普通ではないです。

何かしらネガティブな事象が起こっているんじゃないかと思うのが、普通です。

その事象が、工事に要した資金を回収できないような事象を生じさせている場合、そのお金を回収できない状態、つまりは減損状態にあるかもしれません。

実務的には、このような状況において減損するケースもあれば、しないケースもあります。工事遅延の中身と将来性を見極める必要があるので、実務では難しい判断に迫られることもあるかと思います。

何が言いたいかというと、「減損の兆候の拾い漏れ」がないようにしたいということです。

ちなみに、AI(ディープラーニング)は、「兆候の漏れはないか?」という異常に対するアラートを鳴らすことは得意かもしれませんが、「実際に異常で減損が必要かどうか」まで結論を出すのはどちらかというと苦手ではないかと思います(もちろん、収集できるデータ次第ではありますが、そんなデータ収集できるのかよ、と思います)。

最終判断は人が行うしかないと思いますので、そのような判断をする必要がある事案に出くわした場合、チャンスです。判断プロセス含めて、自分なりにロジックを構築できるよう訓練しましょう。そうすることで、AIに負けにくくなると思います。

将来キャッシュ・フローの見積り

建設仮勘定の将来キャッシュ・フローの見積りは少し特殊です。

38.将来キャッシュ・フローは、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・イン・フローから、継続的使用と使用後の処分のために生ずると見込まれる将来キャッシュ・アウト・フローを控除して見積る。これらの見積りに含められる範囲は、以下のようにする[設例2][ 設例3]。

⑷ 建設仮勘定については、使用に供されていないが、その将来キャッシュ・フローは、合理的な建設計画や使用計画等を考慮して、完成後に生ずると見込まれる将来キャッシュ・イン・フローから、完成まで及び完成後に生ずると見込まれる将来キャッシュ・アウト・フローを控除して見積る[設例4]。

こちらは詳しくは適用指針の設例4を見ていただきたいのですが、

建設仮勘定については将来キャッシュ・インと、将来キャッシュ・アウトのいずれも考慮するのが正解です。

特に注意を要するのは、キャッシュ・インのほうでしょう。

減損の兆候がある状態で示す合理的な計画なわけですから、社外の目は普段よりは厳しいのが普通でしょう。社内でオーソライズされているのは当然として、説得力・現実感のある見積りを行うことに留意が必要かと思います。しかし一方で、根拠があるならばきちんと主張し、過度に保守的に見積ることもないかと思います。

6.不正会計・誤謬

不正会計に関しては、建設仮勘定は、費用の繰延べの目的で、過大計上されるリスクがあります。

これはよく利用される、典型的な手口です。

 

不正ではなくても、経験上、建設仮勘定の中身がグチャグチャになっている場合、会計処理の誤りが高いと思います。

「どうせ資産計上だろ」と、次から次に計上するのはいいのですが、

建設仮勘定の内訳が多く多岐にわたる場合、プロジェクトごとに、期間や請求番号、内容と紐づけて計上額を管理しなければ、途中からわけがわからなくなります。

業務を引き継ぐ際に困りますので、コスト増の要因となります。上長は、四半期決算等を利用して定期的にレビューを行うのが、長い目で見れば結局はコストダウンになると思います。

7.開示

キャッシュ・フロー計算書

建設仮勘定の取得によるキャッシュ・アウトフローは、通常「投資活動」です。

他の有形固定資産の取得と同じカテゴリーに計上しましょう。

ただし、一部の場合において建設仮勘定内容の精査の結果、有形固定資産ではなく、顛末として営業費用(原価/販管費)で計上する場合もあるかもしれません。その場合、「営業活動」の区分で調整することもあります。

固定資産明細表・固定資産明細書

いずれも、明細の中に建設仮勘定を含みます。

忘れないようにしましょう。

8.消費税法

よくある論点として、建設仮勘定の消費税をどう考えるかというものがあります。

ここは、消費税法基本通達を参照すれば答えが書いています。

11-3-6  建設仮勘定
①事業者が、建設工事等に係る目的物の完成に行った当該建設工事等のための課税仕入れ等の金額について建設仮勘定として経理した場合においても、当該課税仕入れ等については、その課税仕入れ等をした日の属する課税期間において法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》の規定が適用されるのであるが、

②当該建設仮勘定として経理した課税仕入れ等につき、当該目的物の完成した日の属する課税期間における課税仕入れ等としているときは、これを認める。

※①②の番号は筆者記載

つまり、以下の時点で仮払消費税を計上します(税抜処理を前提)。

原則 (目的物の完成前に)課税仕入れ等を行った日

→(設計料に係る役務の提供を受けた日,資材を譲り受けた時など)

部分納品時
例外 目的物を完成した日(目的物の全部の引渡しを受けた日) 完成時

①の場合、建設仮勘定を計上した時点で仮払消費税が計上される可能性があります。建設仮勘定でも課税仕入れに該当する場合があるということに留意が必要です。

②の場合、建設仮勘定は税込金額で計上し、完成時(本勘定振替時)に仮払消費税を計上することになります。

完成時(本勘定振替時)は以下の通りです。

(借) 有形固定資産勘定(建物等) ××× (貸) 建設仮勘定 ×××
仮払消費税 ×××

工事の中間金、手付金であれば、基本的に課税仕入れというよりは、単なる中間支払いですので、②で処理する(完成時に課税仕入れとする)ことになると考えられます。

この点、税務通信(2019年7月 3563号)によれば、建設工事等が完成しておらず,“着手金や中間金を支払ったにすぎない”にもかかわらず,その着手金や中間金に相当する金額を課税仕入れの対象としている誤った事例が散見されるとのことです。注意が必要ですね。

まとめ

上記内容について簡単に要約すると、以下の図のようになります。