長期前払費用について理解を深めるための7つのポイント

長期前払費用について理解を深めるための7つのポイント

こんにちは。

ファイターです。

前回、唐突に前払費用について触れさせていただきました。

前払費用の理解を深めるための5つのポイント

しかし、この長期前払費用についても是非触れたかったと思っています。

本来、(企業会計原則的には)長期役務提供契約の経過勘定としての性質くらいしか有さないはずの前払費用ですが、

長期前払費用となると、実際にはいろんな内容に派生しているのが実務です。

今回はそちらについてできるだけ触れていきたいと思います。

(税法上の)繰延資産

繰延資産には、会計上の繰延資産と税法上の繰延資産の2つがあります。

これらは、異なる概念ですので、混同してはいけません。

会計上の繰延資産

会計上の繰延資産は、「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い (実務対応報告第19号)」によれば以下のような項目で、「繰延資産」という勘定科目で処理されるのが一般的です。

① 株式交付費
② 社債発行費等(新株予約権の発行に係る費用を含む。)
③ 創立費
④ 開業費
⑤ 開発費

ただし、これらはいずれも原則として、支出時に費用として処理する(例外的に資産計上する)とされていることに注意が必要です。支出の効果が将来にわたることが見込まれて初めて、資産計上できるロジックになります。

税務上の繰延資産

では一方、税法上の繰延資産とは何なのでしょうか。

上記会計上の繰延資産以外に、以下のような項目があります。

法人税法施行令 第14条 繰延資産の範囲

自己の便益を受ける公共的施設の設置又は改良のために支出する費用 ① 自己の必要に基づいて行う道路、堤防、護岸、その他の施設又は工作物(以下公共的施設という。)の設置等のために要する費用等
② 国等の行う公共的施設の設置等により著しく利益を受ける場合におけるその設置等に要する費用の一部の負担金
③ 鉄道業を営む法人の行う鉄道の建設に当たり支出するその施設に連絡する地下道等の建設に要する費用の一部の負担金
自己が便益を受ける共同的施設の設置又は改良のために支出する費用 所属する協会、組合、商店街等の行う共同的施設の建設又は改良に要する費用の負担金
資産の賃借又は使用のために支出する権利金、立退料その他の費用 ① 建物を賃借するために支出する権利金、立退料その他の費用
② 電子計算機その他機器の賃借に伴って支出する引取運賃、関税、据付費その他の費用
役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用 ノウハウの設定契約に際して支出する一時金又は頭金の費用
製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用 自己の製品等の広告宣伝等のため、広告宣伝用の看板、ネオンサイン、どん帳、陳列棚、自動車のような資産を贈与した場合又は著しく低い対価で譲渡した場合
上記のほか、自己が便益を受けるために支出する費用 ① スキー場のゲレンデ整備費用(基通8―1―9)
② 出版権の設定の対価(基通8―1―10)
③ 同業者団体等の加入金(基通8―1―11)
④ 職業運動選手等の契約金等(基通8―1―12)

これらはいずれも費用を繰り延べるものですが、会計上、勘定科目として「繰延資産」を使用すると、会計上の繰延資産に該当しないものを繰延資産としてBS計上しているような誤解を与えることになってしまいます。

そこで、実務では「長期前払費用」を使用することがよくあります。

一括償却資産

次は、一括償却資産です。

こちらも税務上のルールであります。

法人税法施行令 第133条の2

内国法人が各事業年度において減価償却資産で取得価額が20万円未満であるものを事業の用に供した場合において、その内国法人がその全部又は特定の一部を一括したものの取得価額の合計額を当該事業年度以後の各事業年度の費用の額又は損失の額とする方法を選定したときは、
当該一括償却資産につき当該事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該一括償却資産の全部又は一部につき損金経理をした金額のうち、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を36で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額に達するまでの金額とする。

(基通7―1―13)
上記の場合には、一括償却資産を事業の用に供した事業年度後の各事業年度においてその全部又は一部につき滅失、除却等の事実が生じたときであっても、当該各事業年度においてその一括償却資産につき損金の額に算入される金額は、上記により計算される損金算入限度額に達するまでの金額となる。

(基通7―1―11)
また、一括償却資産の取得価額が20万円未満であるかどうかは、通常1単位として取引されるその単位、例えば、機械及び装置については1台又は1基ごとに、工具、器具及び備品については1個、1組又は1そろいごとに判定し、構築物のうち例えばまくら木、電柱等単体では機能を発揮できないものについては一の工事等ごとに判定する。

そこそこ少額な資産については、所謂3年償却が認められているというものです。

内容は機械装置や工具器具備品などが該当するので、それらの有形固定資産科目で処理したほうが会計的には理論的かもしれませんが、実務上は「長期前払費用」で処理することがよくあります。

償却方法がやや特殊なことや、別表16(六)で集計することもあり、固定資産台帳上でも「長期前払費用」として管理することが多いです。

(固定資産にかかる)控除対象外消費税額等

また税務ですが、控除対象外消費税額等も長期前払費用として計上されることがあります。

控除対象外消費税額等については国税庁のHPによれば以下のような説明があります。

税抜経理方式を採用している場合において、その課税期間中の課税売上高が5億円超又は課税売上割合(注1)が95%未満であるときには、その課税期間の仕入控除税額は、課税仕入れ等に対する消費税額の全額ではなく、課税売上げに対応する部分の金額となります。
したがって、この場合には、控除対象外消費税額等(仕入税額控除ができない仮払消費税等の額)が生じることになります。

(注1) 課税売上割合 = その課税期間の課税売上高(税抜き) ÷ その課税期間の総売上高(税抜き)

要するに、控除対象外消費税額等とは、(仕入税額控除ができないから回収できず、)会計上費用となってしまう分ですね。

固定資産のように長期にわたって使用する資産から発生した控除対象外消費税は、一時の費用(損金)とするのではなく、税務上6年程度で損金とすることとされています。

この表現を会計上のBSでどうするか。

結果として、長期前払費用が採用されることがありますが、個人的には実態を反映している表現かと思います。実際に消費税を固定資産取得時に払っていますし。

(固定資産の)減損会計

減損会計の基準において、減損の対象資産が列挙されています。

その中に、長期前払費用が含まれています。

68.減損会計基準及び本適用指針の対象となる固定資産には、有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産が含まれる(第5項参照)。
したがって、国際会計基準の動向に則して時価評価や時価情報の注記の必要性が検討されたいわゆる投資不動産も含まれ(減損会計意見書 六 1. 参照)、また、有形固定資産に属する建設仮勘定(第13項⑺、第27項及び第38項⑷参照)や、のれん(第17項参照)、長期前払費用(ただし、長期前払利息など財務活動から生ずる費用に関する経過勘定項目は除く。)も含まれる。

ここで、「長期前払利息など財務活動から生ずる費用に関する経過勘定項目は除く」とありますが、具体的にどのような内容が減損の対象となっているのかが気になります。

こちらは一括償却資産も含むものであろうことから、多種多様な内容が想定されますが、注記上確認できた注意すべき内容の例を以下の通り羅列します。

業種 決算日 用途 種類
医薬品 2020年03月31日 医療用医薬品販売の独占的権利 長期前払費用(販売権)
食料品 2020年03月31日 店舗資産 長期前払費用
情報・通信業 2018年12月31日 スマートフォンゲーム配信権等 長期前払費用

権利関係はわかりやすいのですが、店舗単位でグルーピングされている長期前払費用が何を指すか、注記上は明示されていないものばかりでした。

こちらの内容には、まず一括償却資産のような少額な資産は含まれていると思います。そして、基準が明確に適用除外している長期前払利息を除き、通常の経過勘定(前払家賃、前払保険料など)も含まれているのではないかと思われます。

その店舗を閉鎖することにより、もはや資産性が損なわれているならば、減損するという判断は妥当だと思うからです。

為替予約

次に、為替予約です。

こちらは会計基準の要請によるルールです。

10.為替予約差額のうち次期以降に配分された額は、貸借対照表上、長期前払費用又は長期前受収益として両建てで表示する。ただし、決済日が決算日から1年内に到来するものは、前払費用又は前受収益として表示する。

外貨取引において為替予約を行った場合、予約レートによる円決済が確定し、最終決済金額を円で固定できるようになりますが、予約時において取引発生時のレートと予約レートに差額が発生します。

この差額のうち、当期の損益に帰属させずに来期以降に帰属させるべき部分を、決算時において前払費用や前受収益で繰り延べます。このうち効果帰属が将来1年超になる部分は、長期前払費用で処理します。

もはや、継続的役務提供契約はどこに行ったのかという状態ですが、もともと前払費用は経過勘定ですので、使い方としては間違っていないのです。

セール&リースバック

こちらも会計基準に記載されているもので、内容としては為替予約と同様、当期の損益に帰属させないように損益を繰延べする際に使用されます。

セール&リースバックですから、保有する資産は形式上相手方に売却されますが、実際はリース契約によって使用を継続するわけでして、このリースがファイナンス・リースの場合、「売却」が行われたのか疑わしい状況があります。

実態は何も変わってないじゃないですかという視点です。

そこで、上記の場合には売却損益を翌期以降に繰り延べてしまいますが、その際に長期前払費用(長期前受収益)のお出ましです。

確かに他に適切な勘定科目が無いし、わざわざ勘定科目を作る必要もないので、長期前払費用で処理するところに理があるように思います。

建設協力金

こちらは、金融商品会計に関する実務指針(会計制度委員会報告第14号)の設例15 建設協力の会計処理において、厳密には「長期前払家賃」という科目で記載されています。

ここではこの設例を少し深堀していきます。

前提条件
A社は同社がテナントとして入居予定のビル建設に要する資1,000を、地主B社に建設協力として支払った。建設協力の条件は次のとおりである。
⑴ 期間:X1年4月1日から10年間
⑵ 利: 当初5年間は無利息、その後は年率2%の利息を付す。
⑶ 返済条件: X7年3月31日からX11年3月31日までの毎3月31日に200ずつを利とともに返済する。
⑷ 割引率: 市場で観測された本取引に使用すべき割引率は全ての期間について5%とする。

この条件で建設協力金を支払った結果、以下のような仕訳が計上されます。

(借) 長期貸付 720 (貸) 1,000
(借) 長期前払賃料 280

支払ったキャッシュは1000で動かしようがないですが、貸付金1000として計上しないのがミソですね。

長期貸付金は、時価(公正価値)720で当初認識します。

要は、720の価値があるものを、1000で取得している状態です。

では、差額280は何なのか(貸借一致しない状態はあり得ない)。

それが、家賃の前払という考え方です。

A社はテナントとして入居予定(借りる予定)ですが、協力金を支払っている状況です。

差額280は、入居後の家賃の前払いを行っているという考え方ですね。疑似的な家賃支払という理解をしています。

しかし、実際には貸付金は償却原価的に処理されていきますので、貸付金の金利収益がキャッシュ受取金額を超えて発生しますので、この追加の疑似的家賃によってトータル期間で損をするわけではなく、プラマイゼロです。

この建設協力金については、貸し付けて、それが金利がついて返ってくるだけの取引なのに、変にややこしい仕訳になってしまっていて、この会計処理にどんなメリットがあるのか?とよく思っていました。

結局、BS計上額が公正価値になること、損益計算(段階損益)が精緻化される効果を得るための会計処理と理解しています。

IFRSやUSでは、このように金融資産(負債)については時価で当初測定して、その後は償却原価で測定するというのが基本的なスタンスです。日本基準では単に額面で評価することもあるので、そういう意味では簡便的な会計処理です。

金融・ファイナンス的な視点で取引を凝視しないと理解できない仕訳ですが、世界ではそれが通常なのだろうと思っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

長期前払費用は継続的役務提供契約だけではないのかという頭で実務に突入すると面喰うこともあるかと思い、ご紹介させていただきました。

長期前払費用は汎用性の高い勘定科目ですので、その他の局面でも使用されることがあります。会社に特有取引などで、特有の使い方がされることもあります。

また情報アップデートする機会があればチョコチョコ更新させていただきます。