以前、訂正事例で紹介したメタップスですが、最近はICO関連で日経新聞や週間経営財務、その他記事なんかでも話題になっております。
IFRSでも日本基準でも、ICOを明確に規制しているわけではないため、その混乱ぶりにメディアが噛み付いている様相です。
確かにビットコインやらブロックチェーンやらICOやら・・・なにやら新しい概念が最近めまぐるしく生まれては世間を騒がせています。
この状況をいったいどのように整理したらいいのだろうと思っていたら、
このメタップスの社長が書いた書籍に出会いました。
これ↓です。
お金2.0新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)
結論から申しまして、読んでみて衝撃を受けました。
というか、わかりやすくて読みやすく、面白い。
同時に、自分と同程度の年代でこれほどに優秀な人がいるのだ、と関心させられました。
この本では実は会計についても一部触れられています。
特に興味をそそられたところを引用(要約)します。
ものや土地を前提に作られた現代の財務諸表では、企業や事業の価値を正しく評価できなくなりつつある。
もちろん無形資産として反映させることもできるが、それはほんの一部。 ものを扱わないネット企業で、財務諸表上の価値として認識されていないものの1つが「人材」、もう一つが「データ」。 人材について ・ものを扱っていない企業、特にネット企業については「人」が重要 ・もしかすると将来的には従業員満足度のようなデータも「資産」として認識され、企業価値に織り込まれる日が来るかもしれない データについて サーバ上に存在するデータは現在の金融的な考え方では存在しない価値のないものとして無視されている。ただ、ネット企業にとってはこのデータこそが価値であり、失った瞬間に廃業しなければならない。データこそがお金を稼ぎ出す「資産」。現在の金融や会計等の枠組みは、この点をカバーしていないため、色々な不都合が発生している。 ・フェイスブックの最大の価値はユーザーのデータであり、これらの価値をお金に換えていないだけであった。もしユーザーの行動データも資産として企業価値に反映させることができれば、(会計との)認識のズレも生まれなかったはずである。金融の枠組みはどんどん現実世界の価値を正しく認識できなくなってきている。 |
昔から言われていることですが、個人的には従業員などの固定費人材というのは、どう考えても(リース)資産ではないかと思っていました。
非常にドライな考え方ですが、人材が減損や除却の対象になるという点でも非常にしっくりきます。
IFRS16というリースの新基準では、買ってはいないが使用し続けるであろう固定資産を、使用権という理屈で無理矢理資産計上します。リース期間(耐用年数)は、合理的に確実な範囲で見積ることになりますが、これは人間の資産化の話と似ています。
また家畜など生物は固定資産として計上しますが、従業員が社畜と呼ばれるほど会社に酷使されているのが実態なら、固定資産に計上しないと生物資産の会計処理と整合しなくなるのではないでしょうか。
また、上記のデータの話の通り、企業の経済的実態を映し出すのが会計の役割のはずなのですが、換金価値のないものは基本的に資産計上しない現代の会計は、まさに「部分反映」にとどまるという見方はできるのではないかと思います。
現代の会計では、思いやりとか優しさ、無償で人を救うことなど、そういった本来価値があるはずの行動や原理に関しては将来キャッシュを生まなければ資産計上しません。やりようがないので。
しかし、これからの時代はこのようなものにも価値がつくようになると、この著書ではいわれています。
革新的な技術進歩が進む中で、会計もだんだんと実態を反映できなくなってきている、あるいはこれからそれが加速するという風に捉えています。
普段難しい会計基準を考えていると、そのような根本的なことを忘れそうになるのですが、この本を読んでそのようなことを思い出し、また考えさせられるわけです。
さて、この本で会計に関する洞察ができるのは上記の通りですが、この本によって得られるメインの知識は何でしょうか。個人的にはこの本を読んで得られる一番のメリットは、「(著者の認識や予測の範囲で)この先の未来を少し予見できること」かと思います。
ベーシックインカムについては導入を巡り日本でも一部議論になりました。
AIの発展はとどまるところを知りません。
いったい今、私たちの足元で何が起こっているのか。これから何が起ころうとしているのか。
簡単な言葉で理解したい方は、是非手にとってみていただければと思います。