IFRSの無形資産の論点において、注意を要するものがあります。
開発費ではありません。
顧客関連資産ではありません。
それは、広告宣伝費です。
基準書から参照していきます(一部を抜粋)。
IAS38.69
将来の経済的便益を提供する支出が企業に発生したが、認識できるような無形資産又はその他の資産の取得や創出がないことがある。財の供給の場合には、企業は、このような支出を、それらの財にアクセスする権利を有した時点で費用として認識する。サービスの供給の場合には、企業は、当該支出をサービスの受取時に費用として認識する。例えば、研究に関する支出は、企業結合の一部として取得した場合を除いて、発生時に費用として認識される(第54項参照)。このほか、発生時に費用として認識される支出の例として、次のものがある。
a) 開業準備活動に関する支出(すなわち、開業準備費)。
(b) 訓練活動に関する支出
(c) 広告宣伝及び販売促進活動に関する支出(通信販売のカタログを含む)
(d) 企業の一部又は全体の移転又は組織変更に関する支出
前半に考え方を、後半に例を示す形として読み取ることができます。
ここで重要なのが、「発生」という文言の理解です。
例として通信販売カタログで考えますと、「発生」の意味は次のいずれかになります。
考え方①:広告宣伝又は販売促進の開発又は伝達に使用する財又はサービスを受け取った時(配布するカタログを企業が受け取ったとき)に、費用として認識する考え方
考え方②:広告宣伝又は販売促進が、顧客又は潜在的な顧客に伝えられた時(カタログが顧客または潜在的な顧客に配布等されたとき)に費用を認識する考え方
通常、日本基準で考えると、「発生」というのは、②の時点で考えられがちです。
②は、まさに広告行為が行われて情報が顧客に伝わった時点のイメージですね。広告行為の「発生」という解釈です。
しかし、IFRSでは、広告宣伝及び販売促進活動に関しては②の考え方を明確に否定しています。
IFRSは、通信販売カタログの主要な目的は顧客に商品を宣伝することだと考えており、ブランド又は顧客との関係を強化又は創出するものであると考えています。そのため、企業内部で創出したブランド又は顧客との関係は、自己創設のれんのように無形資産として認識してはいけないと考えています。
このあたりはBC46に詳細に記載されています。
しかし、昭和ならともかく、平成も終わろうかというこの現代ではもはや広告宣伝といえば通販カタログ、という時代ではありません。
ウェブやSNSによる販促が主流ではないかというほどです。
もちろんですが、これら広告媒体による違いによって会計処理が変わるわけではありません。
見極めなければならないのは、その活動、そのコストの目的、本質です。
これには議論が生じるでしょうし、判断を求められることかと思います(重要性にもよりますが)。
また、検討対象として漏れがないようにすることも大切かと思います。