初心者がわかる新リース会計(IFRS16号)③~新リース会計の論点_サブリース

前回、新リース会計がどういう発想で作られたものか、そのエッセンスをご紹介しました。

初心者がわかる新リース会計(IFRS16号)②~新リース会計とは

今回は、新リース会計で厄介になりがちな論点について解説します。

日本基準でも新しいリース会計について開発が進んでいくと思いますが、

新リース会計の目的を達成しつつも、適用に当たって十分に実務に配慮した基準になることを切に願います。

使用権という考え方を採用したことで生じる影響

さて「使用権」という考え方を採用したことで発生してしまう派生論点があります。

実務で大きな影響が生じ得るのが、「サブリース」です。

ここではサブリースについて解説します。

サブリースとは

サブリースは、原資産が借手(「中間的な貸手」)から第三者にさらにリースされ、当初の貸手と借手との間のリース(「ヘッドリース」)が依然として有効である取引をいいます(IFRS16)。

要するに、転貸です。

よくある取引例としては、以下のようなものがあります。

● 倉庫の転貸(貸倉庫)
● 従業員社宅(借上げ社宅)

 

サブリースはどういう考え方で会計処理する?

サブリースの当事者は当初の借手と、第3者のいずれかですが、

ここでは当初の借手(サブリースの貸手)の会計処理について注意が必要です。

IFRS16では、貸手の会計処理を考えるにあたっては、

「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の区分によって会計処理を検討することになっています。

いきなりややこしいですが、まとめると以下のとおりになります。

IFRS16
●借手にとってのリース契約・・・使用権の移転の有無に基づいて会計処理する
●貸手にとってのリース契約・・・ファイナンス・リース(FL)か、オペレーティング・リース(OL)の区分で会計処理する(旧リース会計のアプローチが残存)

ところで、なぜ、貸手のリース契約だけが旧リース基準の考え方に留まったのか。

変えても仕方なかったから、と言われています。つまり、貸手がFLとOLの区分に基づくアプローチによって恣意的にOLを採用したとしても、(OLを採用するとリース資産・負債が計上されたままになるため、)リース資産・負債の過少計上をするリスクは少ないので、頑張って改正するメリットがなかったと言われています。

さて話を戻して、(サブリースの)貸手の会計処理です。

上記の流れを見ると、従来通り貸手リースをOLで処理できそうだな、と思ってしまいます。

しかし、実際はそうはいかず、面倒なことにになります。

何が問題か

前回、新リース会計は、「使用権の移転(支配)」に着目すると記載しました。

一方で、旧リースは、「その原資産そのものを移転(支配)することのリスクと経済効果」に着目し、売買か賃貸借かを判断します。

つまり、着目するものが「使用権」の支配なのか、「原資産」の支配なのかという考え方の違いがあります。

この考え方のシフトが、貸手のリースのFL、OLの判定に影響します。

具体的には以下の引用条文を見てください。

IFRS16
B58  サブリースを分類する際に、中間の貸手は、サブリースを次のようにしてファイナンス・リース又はオペレーティング・リースに分類しなければならない。

(b) (省略)サブリースは、原資産(例えば、リースの対象となっている有形固定資産項目)ではなくヘッドリースから生じる使用権資産を参照して分類しなければならない。

BC179 中間の貸手は、資産をヘッドリースの残存期間の全部又は大半にわたりサブリースしている場合には、サブリースをファイナンス・リースに分類することになる。

サブリースのFLとOLの区分は、原資産ではなく、ヘッドリースから生じる使用権資産を参照して、とあります。

こちらは、新リース基準では、”物件の使用権資産の支配がサブリースにおいて第3者へ移転しているかどうかという視点でFL/OLを判断する”と理解すればよいと思います。

では、具体的にどのように判断するのか。

BC179にあるように、「期間」によることが一般的です。

使用権は、一定期間にわたって物件を使用する権利ですから、その一定期間のうちほとんどが第3者に移転しているなら、FLであると考えてしまいます。

イメージは、以下のとおりです。

 

まとめ

結局、IFRS16においてはサブリースはFLになる可能性がより高くなります

FLになってしまうと、サブリース料をリース債権として計上する必要があるので、その計算を行わなければならない可能性があり、実務で手間がかかります。

社宅なんかは、件数が多いことも多く、物件の管理だけで物凄くコストがかかる可能性もあります。

 

実際は、重要性が乏しいなどの理由でOLのような処理で捌いてしまうこともあるかもしれませんが、

”原則FLだが重要性がないからOLのような処理をする”という取り扱いは、重要度が高い場合にはFLに切り替えなければならない可能性があるので、経理的にはプレッシャー要因にはなります。

 

ちなみに、米国基準でも使用権という考え方に基づく新リース基準が適用されますが、

サブリースは「原資産」を参照してFL判定することになっています(842-10-25-6)。

 

日本基準の新リース基準で、サブリースをどのように会計処理することになるのか、気になるところです。

あと個人的には、従業員へ社宅を賃貸している場合に、サブリース料に関して企業側で”リース債権”を計上するのは、従業員が外部の人みたいなイメージがあり、なんだかドライだな(実態にあわない?)と思ってしまいます。それがまさに日本人・日本企業の感覚で、海外とは違うところと言われるのかもしれませんが、会計基準の開発に果たして影響するのか・・・。

★新旧リース会計のポイントについては、こちらもご覧ください!

バトルキャット
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