「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・前編」

  • 2019年6月16日
  • 2019年6月13日
  • 監査

日本監査役協会ホームページで「「監査上の主要な検討事項(KAM)に関するQ&A集・前編」を公表」が公表されました。

ざっと読んでみましたが、結構わかりやすいですね。

ポイントになる点がQAになっており、制度の全体像について理解できます。

QAのうちの気になった1つについて、一部引用させてください。

Q1-3-3 会社にとって未公表であった情報が KAM として開示されてしまうことがあるのでしょうか。

A. 監査人は、(略)守秘義務を負っています。KAM の選定と記載は、最終的には監査人が判断しますが、監査人が追加的な情報開示を促したにもかかわらず経営者が情報を開示しないときに監査人が職業的専門家として正当な注意を払って記載している場合は、守秘義務解除の正当な理由に該当します

一方、KAM は、「当該事項の記載によって企業又は社会にもたらされる不利益が、当該事項を記載することによりもたらされる公共の利益を上回ると合理的に見込まれない限り」、記載することが適切とされています。

KAM として記載することは、監査の透明性を向上させることであり、公共の利益に資するものと推定されることから、監査人が KAM と判断しながら監査報告書に記載しない場合は極めて限定的とされています。
守秘義務解除の適否の問題は、多くの場合は表現の工夫により回避できるものと考えられます。(略)。企業に関する未公表情報が不適切に開示されないよう、監査人が記載の内容を工夫することにより問題を回避できるものと考えられます。

また、KAM の選定と記載に当たり、どのような情報開示が中長期的に会社の企業価値の向上に資するかという観点も重要であり、(略)

実務においては、会社側が開示をちゅうちょする場合は何らかの理由があるはずで、監査人としてもその理由を理解せずに、一方的に KAM の記載内容を決めることはまずないと考えられます。

ここのQAにある内容は、以前”KAMをより意義あるものとする!?”という記事で触れた点と重複するところがあります。

KAMがそもそも制度の延長線上としての位置づけなのか、追加情報としての位置づけなのかという議論と絡むため、重要だと思っています。

未公表情報の提供を会社がどれだけ嫌がるかにフォーカスがあたっていますが、

そもそも監査の重要な領域について公表を拒むことは普通無いだろう、あったとして、それはまずいだろうという前提が漂っておりますね。

会社は、もちろん出したくない情報もあるのかもしれないですが、

監査上の重要な領域についてはごまかし辛くなっていくのでしょうね。

 

あと、Q1-3-8にて 画一的な記載(いわゆる「ボイラープレート」)が懸念されていますが、

これは、個人的な予想では結構あるんじゃないかと思います。

しかし、だからといって無理に個性的な記載にしようとするのも、時間がかかるし、そもそも趣旨と違うと思うので、

重要な情報が投資家に伝わっているのか?という視点が大切なのでしょうね。