【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】発行可能株式総数

【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】シリーズについて

当ブログの【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】シリーズでは、

実際の訂正報告書の事例をもとに、その内容と発生原因をできるだけ具体的に研究し、ご紹介しています。

その特徴は以下の通りです。

◆読者が得られるメリット:

読者は実際のリアルな訂正事例をもとにリスクの高い領域の作成要領・記載要領・作成方法について効率的に学習できます。その結果、有報の作成・監査の精度を高め、訂正報告書発生のリスクを減らすことができます。

◆情報源:

EDINET

◆記事の信頼性:

監査と経理の両方の立場において、多くの開示実務を担当してきた公認会計士が記載しています。

(※ただし、EDINETから得られる情報は限定的であり、推定・推測が入らざるを得ないため、あくまで筆者の経験等に基づく参考情報としてご使用いただくことを想定しております。会計実務は多くの判断を伴うものであり、本情報をもとにしたいかなる損失等についても当サイトで責任を負担することはできませんので、予めご了承ください)

それでははじめていきます。

【発行体カテゴリー】

東証1部

【監査法人カテゴリー】

Big4以外

【訂正箇所】

有価証券報告書

第4 【提出会社の状況】1 【株式等の状況】(1) 【株式の総数等】① 【株式の総数】

発行可能株式総数

【訂正内容(事実関係)】

1.期末日時点の定款に記載された総数を記載すべきところ、期末日後の定款変更効力発生によ増加した増加後の総数を記載していた

【訂正内容詳細解説(推測含む)】

訂正前後の比較

(訂正前後比較)

 

 

Point

  1. 注書で期末日後の定款変更による株式数の増加について触れているが、表中の株式数は当該増加前の株式数によるべきであった。

【発生理由(推測)】

  1. 詳細は不明だが、おそらくチェック不足。実は、招集通知にも発行可能株式総数は記載されており、整合性の確認が可能な箇所であった。
  2. あまり変更のない箇所なので、慣れていないという意味で誤るリスクは相対的に高かったかもしれず、記載例を念のため確認するなど入念なチェックが必要

【どのようにすれば防げたか?】

【防止方法と教訓】

1.発行可能株式総数は、枠数であり、有報の中では整合性チェックで直接確認することは難しい。しかし、招集通知にも同じ情報が記載されているため、整合性の確認は可能であった。

2.普段あまり変化のない項目が変化した場合、注意が必要。すなわち、いつ時点の情報を記載すべきなのか、入念な確認が必要

まず1.について

発行済株式総数と異なり、有報内部では整合性チェックを行うのが難しい箇所。

では、整合性チェックはやりようがないのでしょうか。

実は、招集通知(事業報告)の”株式に関する事項”の欄にも、同じ情報である発行可能株式総数は記載されています。

本件の場合は、招集通知には正しい株式数が記載されていたので、この整合性を確認すれば、訂正を防げた可能性はあります。

事業報告との整合性チェックを行うことで、ミスを防げる良い例だと思います。

そのため、今回投稿により共有させていただきました。

 

2.について

これは、誤謬リスクについての考え方のお話です。

ルーチンでこなしているものは、あまりリスクは高くないことが多いのですが、

何かしらいつもと違う、変化があった項目については、ミスをするリスクは高まります。

監査人も、経理担当も、この点についてはよく反応できるようにしておくと、「リスク・アプローチ」の実践がされやすくなると思います。

勿論、容易いことではないです。

それでも、効率的にチェック・監査をしていく上では有用な「作法」だと思います。

経理担当と、監査人が、それぞれこの心構えをもつことで、検証力は2倍になると思います。

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