IFRS16 リース早期適用事例 海外事例にも学ぶ

  • 2019年7月7日
  • 2019年7月6日
  • IFRS

IFRS16 海外のリース早期適用事例

経営財務3414号にて、”IFRS第16号「リース」の海外における事例分析 前編”なる連載が記載されております。

早期適用した事例は、日本では株式会社メンバーズと、サッポロホールディングス株式会社の2社のみになっていますが、海外まで視野を広げるとあらためて見えてくるものがあるのでしょうか・・・?

個人的には、以下項目について確認できたと思っています。

BSの表示方法

記事では、”多くの企業は,使用権資産を貸借対照表において独立掲記せずに,有形固定資産に含めて表示し,その旨および内訳を開示している”と指摘しています。

IFRS16では、①BSで区分掲記するか、②有形固定資産に含めて表示+注記で内訳開示するかどうか、選択することができます。

①の場合、”使用権資産(Right of use asset)”などとして開示することになると思われます。

②の場合、建物や設備、車両などの名称で開示することが想定されます。

”使用権資産”という名称からして、”無形固定資産”のような印象を持ってしまいがちですが、

実際使用している物件が有形固定資産に属するのであれば、そのような名称で表示することが想定されます。

問題は①と②について、どちらのほうが事例が多いかということですが、

早期適用事例からすると、②のほうが多数のようです。

IFRSでは日本基準に比べて、BSの開示をシンプルにして注記で詳細をフォローするという傾向がありますので、

その考え方からすると、②のほうが傾向に合致します。

個人的には①のほうがすっきりしますが。

リース債務の長短分類

IFRSにおけるBSの流動・非流動の分類は、日本基準と同様に正常営業循環期間を考慮して判断します。ただこの期間が明確ではない場合、12か月を基準として決定します。

このルールはIFRS16でも生きています。

この考慮の結果、使用権資産はその性質に鑑みて通常は非流動資産に区分されると考えられます。

一方でリース負債はその返済の時期に応じて,流動負債または非流動負債に区分されることとなります。

Nestle S.A.社の例

同記事で触れられていた一つの事例が以下です。

IFRS16によるPLに対する影響が一覧化されていますが、

表中の①は営業利益で、②は財務費用ということになります。

この①と②の数字は概ねバランスしています。

②が金利影響だとすると、①は減価償却費(借方)とリース料(貸方)の差額(貸方残)ということになります。

その他

その他の事項については、以前投稿したIFRS第16号「リース」の適用開始 事例分析に記載した内容と同じようなものだったと感じました。

 

IFRS16はまじめにやるとかなり複雑な計算を要求されますし、

簡便法を適用したからといって、必ずしもすべてラクになるわけではなく、注記では意外と苦労します。

本当に手間のかかる基準ですので、適用にあたっては細心の注意を払うべきだと感じてます・・・。