包括利益とは? →要するに、単なるBSの増減差額

包括利益とは? →要するに、単なるBSの増減差額の一部です

こんにちは、アカウンティングファイターです。

今回は、包括利益について解説します。

包括利益って、決算書を読んでいてよく出てくる言葉です。

私は基準主義者なので、まず基準の定義を紹介させてください。

包括利益の定義

包括利益の表示に関する会計基準(企業会計基準第25号)

4.包括利益」とは、ある企業の特定期間の財務諸表において認識された純資産の変動額のうち、当該企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分をいう。当該企業の純資産に対する持分所有者には、当該企業の株主のほか当該企業の発行する新株予約権の所有者が含まれ、連結財務諸表においては、当該企業の子会社の非支配株主も含まれる。

5.「その他の包括利益」とは、包括利益のうち当期純利益に含まれない部分をいう。連結財務諸表におけるその他の包括利益には、親会社株主に係る部分と非支配株主に係る部分が含まれる。

Google検索などで、「包括利益とは」って検索すると、上記のような答えが一番上で表示されます。

正直パッと見、意味がわかりません。

意味がわからないものが有価証券報告書に出ています。

それだと決算書読めないので困ります。

図で考えてしまう

会計で意味がわからないときは、図解です。

もう結論を先に出してしまいます。

こちらの図では、期首BS~期末BSの純資産の内訳について、以下の4つで表現してみました。

①資本金

②その他

③利益剰余金

AOCIAccumulated Other Comprehensive Income=その他の包括利益累計額)

上記定義のうち、「純資産の変動額」というのは、この①~④の合計の変動額ということになります。

定義に記載されている、「企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引によらない部分」というのが、①資本金と②その他の増減だったとします。

このケースでは、①②の増減なしです。

つまり、このケースでは、③利益剰余金と④AOCIの増減が、包括利益だということになります。

BSの増減額の中から、③④の増減を引っ張り出したものが、包括利益だという定義の仕方です。

包括利益は、ただの差額でしかないということになります。

包括利益は、「BS差額のうち、資本金などの増減を除いた分」と覚えておけば、十分です。

そして、図にあるとおり包括利益=当期純利益+その他包括利益という計算式になりますが、

その他包括利益って何なんだ?という疑問が出てきます。

その他包括利益と当期純利益の違い

包括利益の定義により、まあどういう計算で算定されるものかというのはわかりました。

でも、当期純利益と包括利益という2つの利益が決算書に出てきます。

さらに、包括利益=当期純利益+その他包括利益とか言ってます。

この、当期純利益とその他包括利益の違いって何なんですか?と思う人、沢山いると思います。

一言で言いますと、以下の通り。

(1)当期純利益=当期において企業が事業を頑張ったことで獲得された利益

(2)その他包括利益=当期において、企業がそんなに頑張らなくても、市場指標の変動等により獲得できちゃった未確定の含み利益

(1)は、まさに企業の目的である利益を追求した結果、得られた利益ですが、

(2)は、まあ増えるに越したことはないけど、たまたま増えてくれた純資産の増加分(たまたま減ってしまった純資産の減少分)

という意味の違いがあります。

(2)は市場相場の変動によって企業努力とは概ね直接的に関係しない、どうしても生じてしまったもので、まだ決済されていない含み益という意味なので、そういう目線で数字を見る必要があります。

たとえば、(1)がものすごい黒字なのに、(2)がものすごいマイナスになったことで、純資産が大きく減少してしまった会社があったとして、

この会社への投資判断をする際には、純資産の増減を(1)と(2)に分解して分析しないと、正しく企業のことを把握できません。

具体的な項目としては、例えば以下のようなものが挙げられます。

・持合株式として保有している上場株式の株価の変動による増減(その他有価証券評価差額金)

・為替や金利の変動による増減(繰延ヘッジ損益、為替換算調整勘定)

・複雑な見積計算により計算している企業年金・退職給付債務の変動による増減(退職給付に係る調整累計額)

そして、(2)については、その変動の増減額が確定したとき(市場で株式を売却したり、為替を決済したとき)には、(1)に振替えられます((1)として集計されます)。

これをリサイクルといいますが、こちらはかなり会計の世界の都合のテクニカルな話になります。