インセンティブ報酬(役員報酬)⑤_株価連動型金銭報酬

役員のインセンティブ報酬を知りたい

インセンティブ報酬は、コーポレートガバナンス強化政策としても、某自動車会社の事件があったことからも広がりを見せつつあり、法律や税制も巻き込んで世間的に話題になっています。

しかし会計処理については実は制度が追いつき切っていないこともあるようです。

我々会計戦士は常にインセンティブ報酬の論点に出くわすわけではないですが、時代に取り残されないように公表資料をベースに理解を深める記事を書こうと思います。

ソースは、「実務対応報告第 36 号」、「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告(JICPA)」や「「攻めの経営」を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~(2019年5月時点版)(経済産業省)」をベースにしますが、

適宜個人的な経験やその他の要素を織り込んでいきます。

読者メリット

概要と論点のスピードキャッチ

概要

スキーム名

株価連動型金銭報酬

特徴

■株価連動型金銭報酬とは、株式の発行や自己株式の処分は伴わず金銭(現金)によって役員等に給付される報酬であるものの、当該報酬の額が自社ないし親会社等の株価に連動して決定されるような報酬

一般的に、株価連動型金銭報酬に区分される報酬制度としては、以下のようなものがある。

・ ファントム・ストック
仮想的に株式を付与して、配当の受領権や株式の値上がり益(あらかじめ設定された一定額=仮想行使価格との差額)に相当する現金で役員等に交付する株価連動型の金銭報酬制度

・ SAR(株式増価受益権、ストック・アプリシエーション・ライト)
仮想的な株式の交付はなく、あらかじめ設定された一定額(仮想行使価格)を株価が上回っている場合に、当該差額に相当する現金を役員等に交付する株価連動型の金銭報酬制度(仮想的な行使価格を設定する。)

 

 

出典:「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告(JICPA)」、「「攻めの経営」を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~(2019年5月時点版)(経済産業省)」

日本基準の会計処理

基本的な会計処理の考え方
・一般的に想定される会計処理

ア.制度導入日
仕訳なし

イ.勤務対象期間の各期末日(四半期決算日を含む。)
借:役員報酬(*1) XXX  /貸:負債(引当金*2) XXX

*1 ここでは、費用項目の科目名を便宜的に役員報酬としている。

*2 引当金の計上額は、単価(*3)×仮想交付株式数(見込)×(既経過月数÷総勤務対象月数)によって算定することが考えられる(*4)。

*3 当該引当金は将来において企業が現金を支払う義務に対応するものであり、期末日の株価を基礎とする方法や、将来の株価変動(ボラティリティ)も考慮した当該株価連動報酬の時価(いわゆるオプション価値)により算定する方法も考えられる。

*4 勤務対象期間の設定がない場合、決議時点で支払見込額の全額が引当計上し、実際に当該報酬が支払われる時まで、時価の変動に応じ期末ごとに評価額の洗替えを行うと考えられる。

ウ.支払日
借:負債(引当金) XXX  /貸:現金預金 XXX
借:役員報酬(*) XXX

* 負債計上額と実際支払額の差額を支払日に調整する処理を想定。

 


引用:「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告(JICPA)」

日本基準_会計上の論点(投稿日時点)

省略(上記参照)

税務処理

2017 年(平成 29 年)度税制改正において、役員に対して交付されるファントム・ストックや SAR といった株価連動型金銭報酬についても、業績連動給与(法人税法第 34条第1項第3号)に該当するものについては、新たに損金算入が認められることとなった。

具体的には、損金算入が認められる業績連動給与に係る算定指標の範囲に、「株式の市場価格を示す指標」が加えられたことから、2017 年(平成 29 年)4月1日以後に導入の決議が行われるものについて、損金算入が認められることになると考えられる。

引用:「「攻めの経営」を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引~(2019年5月時点版)(経済産業省)

 

IFRSの会計処理

株価連動型金銭報酬(現金決済型の株式報酬)についても、IFRS 第2号の適用範囲に含まれる(IFRS 第2号第2項及び同付録A)。

貸方科目は、資本ではなく、企業の義務であることから負債となる(IFRS 第2号第 30 項から第 33 項)。

引用:「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告(JICPA)」

事例

以下の事例が確認できました

ソフトバンクグループ㈱(IFRS)

・注記

21.株式報酬

(3) ファントム・ストック制度

当社は報酬の付与において、権利確定時の株価を基礎とした金額を現金で決済するファントム・ストック制度を導入しており、現金決済型として会計処理しています。

2017年3月31日に終了した1年間および2018年3月31日に終了した1年間において存在する当社のファントム・ストック制度の内容は、以下の通りです。

ソフトバンクグループ㈱、SB Group US, Inc.、SoftBank Holdings, Inc.およびSB Investment Advisers (UK) Limitedは、同社の役員、従業員およびその他のサービス提供者に対し、ソフトバンクグループ㈱が発行する株式を対象としたファントム・ストックを付与しています。

当該ファントム・ストックは、付与日から権利確定日まで継続して勤務していることが求められ、権利確定条件は以下の通りです。なお、権利確定時の決済額は1ユニットあたり1株を算定の基礎とします。

2018年3月31日現在において存在する制度に係る総ユニット数および権利確定条件

総ユニット数

権利確定条件

1,104,799

勤務提供開始日から5年目で全ての権利が確定

1,840,209

勤務もしくはサービス提供より主として4年から6年を権利確定期間とし、一定期間に渡って権利確定

 

㈱ファンケル(日本基準)

コーポレート・ガバナンス情報

 ファントム・ストックは、一定の期日における株価に応じて支給額が決定される金銭報酬です。株価のみならず中期経営計画の達成に向けたインセンティブを与えるため、中期経営計画に定める業績目標(連結売上高および営業利益)の達成度合いに支給額が連動します。

3.業績連動型株価連動報酬制度(ファントム・ストック)の算定方法

(1)制度の概要

当社、以下(2)に定める支給対象役員を対象に、第2期中期経営計画(2019年3月期~2021年3月期)を評価期間とした業績連動型株価連動報酬(ファントム・ストック)を付与いたします。支給対象役員は、評価期間における業績指標確定後、業績指標および当社株価に応じて算定される額の金銭の支給を受けます。

なお、当社が当社普通株式につき剰余金の配当を行う場合であっても、ファントム・ストックについては、配当金ないし配当金相当額の支払は行いません。

(2)支給対象役員

当社の取締役、取締役執行役員および執行役員(社外取締役除く)

なお、同様の制度を当社の執行役員にも採用しております。

(3)評価期間

2018年4月1日から2021年3月31日

(4)支給時期

評価期間満了後3ヶ月以内

(5)各支給対象役員に対する支給金額の算定方法(100円未満を切り捨て)

付与ポイント数(以下A)×支給率(以下B)×当社普通株式の価額(以下C)

ただし、支給金額の総額は2.5億円を上限とします。

(注)法人税法第34条第1項3号イ(1)に規定する「確定した額」は上記上限金額とします。上記算定式により算定される支給総額が当該上限金額を超過するときは、各支給対象役員に対する支給額は按分的に減額調整されるものとします。

 

アステリア㈱(IFRS)

注記

(4)ファントム・ストック制度

当社グループは、当社の執行役員及び従業員に対して、権利確定時の市場価格を基礎とした金額を現金で決済するファントム・ストック制度を導入しており、現金決済型として会計処理しています。

本制度は、勤務条件の要件を満たすことにより、権利が確定します。権利確定期間は、原則3年にわたります。

公正価値の算出は、当連結会計年度末の株価により算出しております。

当連結会計年度において、本制度に関して計上された株式報酬費用は、196千円であり、本制度により生じた負債の帳簿価額は、196千円であります。当該費用は、連結損益計算書上、「販売費及び一般管理費」に計上しております。