顧客関連資産の会計処理(税効果)について、注意すべきポイント

  • 2019年10月25日
  • 2020年12月6日
  • 会計

顧客関連資産の会計処理(税効果)について、注意すべきポイント

こんにちは、アカウンティングファイターです。

しばらく更新できておりませんでしたので、久々の投稿となります。

今回は、企業結合関係のお話です。

会社を買収して企業結合したときなどに、のれんが計上されることはご存じかと思いますが、

のれんは最終的な差額であり、それ以前のプロセスとして、「取得原価の配分」をする必要があります。

企業結合に関する会計基準(企業会計基準第21号)の言葉を借りると、以下のようになります。

28. 取得原価は、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点において識別可能なもの(識別可能資産及び負債)の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して企業結合日以後1年以内に配分する。

今回は、この「被取得企業から受け入れた資産」のうち、顧客関連資産が発生したケースを題材に、会計処理を考えてみます。

実務でこの顧客関連資産に遭遇した場合、陥ってしまいがちな思考があります。

それが、以下のような仕訳イメージです。

借方 諸資産 100 貸方 現金預金 300
顧客関連資産 50
のれん 150

確かに、顧客関連資産に対しても取得原価が配分されていますので、正しいように見えます。

この場合、顧客関連資産が償却されるとすると、のれんとの合計額200が償却対象となるため、

「顧客関連資産を計上してもしなくても償却費(P/L)のインパクトは同じ」との錯覚をしてしまいがちです。

実は、ここに落とし穴がありまして、これは錯覚であり誤りとなります。

何が落とし穴かというと「税効果会計」です。

結論から言いますと、税率30%とすると、以下のような仕訳が正しいものになります。

借方 諸資産 100 貸方 現金預金 300
顧客関連資産 50 繰延税金負債 15
のれん 165

ちょうど繰延税金負債の15だけ、のれんの金額が変更になっています。

この意味については以下のように考えることができると思います(私見)。

顧客関連資産は、買収対象会社(=子会社)が「実は持っていた無形資産」であり、これは子会社における会計上の資産となるが、税務上の資産とはならない。

そのため、将来子会社でこの無形資産を譲渡等したときには、会計上の無形資産が費用化される一方、税務上は損金とならず、税金は変わらない(資産の費用化額にたいして、税務では加算調整するため、税金はかかってしまう)。

つまり無形資産として認識した金額だけ、将来の連結P/Lで税率がアンバランスになってしまいます。

(将来のこの無形資産の処分時には、連結P/L上の表面税率は理論税率と一致しない。)

そこで、この無形資産の分だけ税効果会計を行い、将来の税金負担額を買収時にBS計上しておくため、繰延税金負債が計上されます。

この繰延税金負債は、企業結合により取得した価値を減らすものですが、取得対価は300で変わりませんので、

結果として差額の概念であるのれんは、15だけ増えてしまうという結論になります。

つまり、のれん+顧客関連資産の償却費の話をするならば、50+165=215の償却費を見ておく必要があります。

ただし、顧客関連資産の繰延税金負債は、その償却にあわせて取り崩されていきますので、

税引後利益までみた、トータルの損益影響は、変わらないことになります(段階損益が異なる)。

 

こうやって話を聞くとまあそうですねという理解になるのですが、

企業結合の会計基準等を見ても、上記のような具体的な話は記載されていません。

それが、盲点を生みやすくなっていると思い、基礎的な話かもしれませんが、今回記事を書きました。

今後も、実務上の留意点等あればUPしていきたいと思います。