【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】セグメント 地域ごとの情報(主要な国別の売上高)

当ブログの【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】シリーズでは、

実際の訂正報告書の事例をもとに、その内容と発生原因をできるだけ具体的に研究し、ご紹介しています。

その特徴は以下の通りです。

◆読者が得られる成果:

読者は実際のリアルな訂正事例をもとにリスクの高い領域について作成要領・記載要領・作成方法について効率的に学習できます。その結果、有報の作成・監査の精度を高め、訂正報告書発生のリスクを減らすことができます。

◆情報源:

EDINET

◆記事の信頼性:

監査と経理の両方の立場において、多くの開示実務を担当してきた公認会計士が記載しています

(※ただし、EDINETから得られる情報は限定的であり、推定・推測が入らざるを得ないため、あくまで筆者の経験等に基づく参考情報としてご使用いただくことを想定しております。本情報をもとにしたいかなる損失等についても当サイトで責任を負担することはできませんので、予めご了承ください)。

 

それでははじめていきます。

 

Contents

【発行体カテゴリー】

東証1部以外

【監査法人カテゴリー】

Big4

【訂正箇所】

有価証券報告書 セグメント

【訂正事実】

・地域ごとの情報にて、「アジア」として開示していたが、国家の情報が不足していた。
・脚注で、”2 アジアのうち、中国は●●百万円であります。”と追加した。

【訂正内容詳細(推測含む)】

 

【発生理由(推測・仮説)】

  1. 基準31項と適用指針16項の見落としもしくは読み違え
  2. ”国”を開示してくださいという基準の要請のため、例えば「アジア」や、「北米」などの曖昧な表現は認められないということになります。

【教訓/コメント】

【基準の理解】

セグメント会計基準 地域に関する情報

31 企業は、地域に関する情報として、次の事項を開示する。なお、当該事項を開示することが実務上困難な場合には、当該事項に代えて、その旨及びその理由を開示しなければならない。

(1) 国内の外部顧客への売上高に分類した額と海外の外部顧客への売上高に分類した額

海外の外部顧客への売上高に分類した額のうち、主要な国がある場合には、これを区分して開示しなければならない。なお、各区分に売上高を分類した基準をあわせて記載するものとする。

(2) 国内に所在している有形固定資産の額と海外に所在している有形固定資産の額

海外に所在している有形固定資産の額のうち、主要な国がある場合には、これを区分して開示しなければならない。

なお、本項に定める事項に加えて、複数の国を括った地域(例えば、北米、欧州等)に係る額についても開示することができる。

セグメント 適用指針

16 地域に関する情報(会計基準第31項)は、開示する海外の外部顧客への売上高に分類した額のうち、単一の国の外部顧客への売上高に分類した額が、損益計算書の売上高の10%以上である場合、これを主要な国として区分して開示する。また、海外に所在している有形固定資産の額のうち、単一の国に所在する有形固定資産の額が、連結貸借対照表又は個別貸借対照表(以下「貸借対照表」という。)の有形固定資産の額の10%以上である場合、これを区分して開示する。

 

【教訓】

  • セグメントも非常に誤りやすい開示の一つなのですが、この”国別売上の開示”については過去、かなりの会社で訂正事例が発生しています。
  • 確かに基準ではさらっと書いてあるだけなので、実務的には「アジアでも別にいいじゃないか」と思ってしまいがちです。正直、そうですよねと同意したくなります。
  • しかし、基準が明確に国家別の区分を要請している以上、10%を超える国家がある場合は注意が必要となります。
  • さらにややこしいのが、基準31項のなお書きです。「本項に定める事項に加えて、複数の国を括った地域(例えば、北米、欧州等)に係る額についても開示することができる。」とはいっていますが、「国を記載する代わりに地域を開示できる」とは言っていません。このなお書きがオーバーディスクローズを許容することを明示する趣旨なら、そもそも何の意味があるのかと問いたくなってしまいますし、それを言うならむしろ「国別の記載を省略できない。」とハッキリ書いてくれればと思いますが・・・。日本語の難しいところなのかもしれません。

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※以下訂正事例もご確認ください!

 

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