当ブログの【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】シリーズでは、
実際の訂正報告書の事例をもとに、その内容と発生原因をできるだけ具体的に研究し、ご紹介しています。
その特徴は以下の通りです。
◆読者が得られる成果:
読者は実際のリアルな訂正事例をもとにリスクの高い領域の作成要領・記載要領・作成方法について効率的に学習できます。その結果、有報の作成・監査の精度を高め、訂正報告書発生のリスクを減らすことができます。
◆情報源:
EDINET
◆記事の信頼性:
監査と経理の両方の立場において、多くの開示実務を担当してきた公認会計士が記載しています
(※ただし、EDINETから得られる情報は限定的であり、推定・推測が入らざるを得ないため、あくまで筆者の経験等に基づく参考情報としてご使用いただくことを想定しております。本情報をもとにしたいかなる損失等についても当サイトで責任を負担することはできませんので、予めご了承ください)。
それでははじめていきます。
Contents
【発行体カテゴリー】
東証1部以外
【監査法人カテゴリー】
Big4以外
【訂正箇所】
有価証券報告書 単体BS
【訂正事実】
単体BSにおいて、財規32条にしたがって関係会社長期貸付金を区分掲記しなければならないところ、長期貸付金に含めてBS計上していた。
【訂正内容詳細(推測含む)】
(訂正前)
(訂正後)
【発生理由(推測・仮説)】
1.増減分析不足
【教訓/コメント】
【基準の理解】
・財規32条投資その他の資産の区分表示
投資その他の資産に属する資産は、次に掲げる項目の区分に従い、当該資産を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。
七 長期貸付金。ただし、株主、役員、従業員又は関係会社に対する長期貸付金を除く。
八 株主、役員又は従業員に対する長期貸付金
九 関係会社長期貸付金
上記のように、単体BSにおいては、長期貸付金については関係会社等に対するものとそうでないものを区分してBS表示してくださいというルールになっていますので、要注意です。
この点、前期のBSでは従業員に対する長期貸付金も含めてそのように区分されていることから、前期は問題なかったいえます。
しかし当期になってなぜか関係会社長期貸付金がゼロになっています。
この場合、貸付金がすべ回収されたのを理由としているならば、特に問題はなかったと思います。
しかし実際は残高があるのにゼロ(-)という開示になっていたようです。(なぜそうなったかという、本当の理由については不明ですが、単純ミスであるのか、あるいは何らかの要因があったのかもしれません。)
【教訓】
・要因が何であるにしても、開示書類上においての「増減分析」にて、なぜ当期になっていきなりゼロになったのかという理由が詰められていなかったことは間違いないと思います。
増減分析にはいろいろな視点がありますが、今回のように「急に残高がゼロになった」場合は、注意が必要となるケースです。もちろん、「すべての債権が回収された」など、合理的な理由が伴っていることも多いのですが、本件のように単純に科目を誤っているケースも多いため、必ず理由を詰めていくことが必要になります。
増減分析によって発見されるミスは経験上、かなり多いです。
今回のケースでも、ベテラン担当者であれば、質問をして理由を詰めている可能性が高いと思います。
監査人のみならず、経理側としても、最後の最後までチェックや分析を継続していく姿勢が、訂正報告書の提出を食い止めることに繋がると信じています。
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