当ブログの【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】シリーズでは、
実際の訂正報告書の事例をもとに、その内容と発生原因をできるだけ具体的に研究し、ご紹介しています。
その特徴は以下の通りです。
◆読者が得られる成果:
読者は実際のリアルな訂正事例をもとにリスクの高い領域の作成要領・記載要領・作成方法について効率的に学習できます。その結果、有報の作成・監査の精度を高め、訂正報告書発生のリスクを減らすことができます。
◆情報源:
EDINET
◆記事の信頼性:
監査と経理の両方の立場において、多くの開示実務を担当してきた公認会計士が記載しています
(※ただし、EDINETから得られる情報は限定的であり、推定・推測が入らざるを得ないため、あくまで筆者の経験等に基づく参考情報としてご使用いただくことを想定しております。本情報をもとにしたいかなる損失等についても当サイトで責任を負担することはできませんので、予めご了承ください)。
それでははじめていきます。
Contents
【発行体カテゴリー】
東証1部
【監査法人カテゴリー】
Big4
【訂正箇所】
有価証券報告書 経理の状況 連結BS注記 担保資産および担保付債務
【訂正事実】
端的に言えば、担保資産の注記にて、記載するべき担保資産の記載が漏れていた(実は他にも記載するべきものがあった)。
【訂正内容詳細(推測含む)】
訂正された注記をよく読むと、以下のような記載がありました。
(注) 上記のほか、連結上消去されている関係会社株式(前連結会計年度●百万円、当連結会計年度●百万円)、受取手形及び売掛金等(前連結会計年度●百万円、当連結会計年度●百万円)を担保に供しています。 |
これは、連結上消去されている関係会社株式を外部借入等の担保に供していることを意味します。
そしてこれは、連結BSに計上されているその子会社の保有する各資産(のうち一部)が、担保資産になっているような状態を意味します。
【発生理由(推測・仮説)】
- 連結上、関係会社株式が相殺されているため、担保資産は消滅したかのように錯覚してしまいがちだが、実際は各社が保有する現金預金や固定資産が担保資産になっていると解釈されることがあるため、注記のうえでは、これらを担保資産として記載することを検討しなければならなかった。
- 上記のような錯覚があったのではないかと推測可能。
- また企業および監査人ともに、単に検討漏れがあったとも推測可能。
【教訓/コメント】
【教訓】
関係会社株式を担保提供している場合、担保資産として子会社の資産を注記する必要がないか、検討が必要! |
注記が網羅的かの検討は、実務上、意外と難しいです。
難しいというか、気付けば当然対応できるのですが、その「気付く」ということに対して、これを100%網羅してくれる人はいないのです。
網羅性というのは、本当に常時確保するのが難しいものです。
そういうのは監査法人が監査で気付いて知らせて下さいよ、と言われそうです。
もちろん監査で気付くべき大きな論点はすべて顧客にフィードバックされると思います。
しかし実際には、100%すべての論点について保証されるわけではありません。
残念ながら、監査に100%の保証を求めることは制度的にも実質的にもできないのです。
監査資源は有限であって、開示チェックに十分な時間をあてられなかった場合、開示チェック漏れもあり得ます。
肝心なのは、経理担当者や監査人が、”今回のような内容の訂正事例があったこと”と、”開示漏れが起こりうること”を知っておくことです。
最も恐ろしいのは、このような事例が共有されず、また同じ過ちが繰り返されることです。
例えば誰かが何かに失敗したとします。
そこには、必ず何らかの理由があると思います。
そしてその理由は、他の誰かにもあてはまることも多いのではないかと思います。
そのため、誰かがやったある失敗は、他の誰かが繰り返す可能性があるのです。
でも、これはポジティブにとらえることもできます。
つまり、「誰かが、どこかで、痛い思いをしてくれた」のです。
何でもそうですが、こういう他社の経験は、積極的に活かすほうが有利です。
これを活かさないとすれば、私はとても勿体ないことだと思います。
今後も可能な限り事例をご紹介していきますので、このブログの読者の方はご紹介する事例をもとに、開示の勘所をマスターしていっていただければと思っています。
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※以下訂正事例もご確認ください!
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