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【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】シリーズについて
当ブログの【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】シリーズでは、
実際の訂正報告書の事例をもとに、その内容と発生原因をできるだけ具体的に研究し、ご紹介しています。
その特徴は以下の通りです。
◆読者が得られるメリット:
読者は実際のリアルな訂正事例をもとにリスクの高い領域の作成要領・記載要領・作成方法について効率的に学習できます。その結果、有報の作成・監査の精度を高め、訂正報告書発生のリスクを減らすことができます。
◆情報源:
EDINET
◆記事の信頼性:
監査と経理の両方の立場において、多くの開示実務を担当してきた公認会計士が記載しています。
(※ただし、EDINETから得られる情報は限定的であり、推定・推測が入らざるを得ないため、あくまで筆者の経験等に基づく参考情報としてご使用いただくことを想定しております。会計実務は多くの判断を伴うものであり、本情報をもとにしたいかなる損失等についても当サイトで責任を負担することはできませんので、予めご了承ください)
それでははじめていきます。
【発行体カテゴリー】
東証1部以外
【監査法人カテゴリー】
Big4以外
【訂正箇所】
有価証券報告書
コーポレート・ガバナンスの状況 役員報酬等
【訂正内容(事実関係)】
1.役員のストック・オプションの欄に数字の記載をするべきところ、基本報酬に含まれてしまっていた
2.連結報酬等の総額が1億円以上である者の欄に、該当者の記載が漏れていた
【訂正内容詳細解説(推測含む)】
訂正前後の比較
(訂正前後比較)
Point
- ストックオプションの費用額は経理の状況にて記載されており、それ以外の記載と整合していなければならない。
- 1億円を超える役員は、グループ会社4社から報酬を得ているため、集計自体に漏れのリスクがある。
【発生理由(推測)】
- 整合性チェック不足
- 役員報酬の集計・管理不足
【どのようにすれば防げたか?】
【防止方法と教訓】
1.役員報酬は経理の状況以外に記載する箇所がある。一方でストックオプションの費用処理額は経理の状況で注記されている。両者の記載については、整合性をくまなく確認する必要がある。
2.連結報酬が1億を超えているかどうかは、集計して確かめるしかない。連結ベースであるため、当然に子会社の役員としての報酬も含まれるため、役員報酬はきっちりと集計をしなければ、逆に集計漏れというリスクを負うことになる。 |
まず1.について。
こちらは。以前に【有価証券報告書 注記の訂正事例でわかる作成/記載要領】コーポレートガバナンス_役員報酬_ストックオプション等の記載漏れ
で紹介した事例と似ています。
似ていますが、内容は少し異なります。
いずれにしても、経理の状況との整合性を正しく行っていれば、訂正報告を防げた可能性が高いです。
経理の状況の案件ではないため、監査法人の守備範囲外となり、企業は自ら記載誤りを防いでいく方法を考えねばなりません。
このブログでも何度も記載していますし、今後も記載し続けていきますが、
「整合性チェック」はとても役に立つ、武器です。
時間がかかることはありますが、有効性が高いので、整合性チェックを行う時間を確保する必要があります。
2.については、ありそうな誤りです。
連結報酬が1億を超えているため、注記が必要でしたという話です。
実際、何か特別な理由があって漏れていた可能性がありますが、
ここではそんな理由はわかりませんので、とにかく正確に集計する必要があるということを主張したくて記事にしています。
もし監査対象になっていれば、グループ会社の役員一覧を入手し、重複してそうな役員の分から、連結各社の帳簿を閲覧するなりして同じ氏名の役員報酬や給与を集計することになるでしょう。
しかしこれにはかなりの時間がかかるので、役員報酬を管理している部門の方が、有報用に時間をかけて集計する必要があると思います。
これは、役員に対する報酬については世論がセンシティブになっていますし、漏れなく把握するという意味でも、異常な支払が無いか確認する意味でも、非常に重要な集計作業だと思います。
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